暁 〜小説投稿サイト〜
魔術師ルー&ヴィー
第一章
XXI
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
か。」
 暗い雰囲気を払拭するかのように、コアイギスがそう言って席を立つと、それにヴィルベルトが首を傾げた。
「どこへ行かれるのですか?」
「何を言っておる。王の執務室だ。そろそろ結論を出した筈だからな。」
 それを聞きヴィルベルトだけでなく、ルーファスとウイツも背中に嫌な汗をかいた。女公爵だけはやはりと言った風であったが、三人にとっては大事と言えるのである。
 そんな四人を引き連れ、コアイギスは意気揚々と王の執務室へとやってくると、執務室の前に初老の男性が立っていたのであった。彼はコアイギスらに気付くと、直ぐ様礼を取って挨拶した。
「これはコアイギス様にバーネヴィッツ公様、大変御無沙汰しております。」
「そなた、何故ここに居るのだ?まさか息子を案じて参った訳ではあるまい?」
 コアイギスが不可思議と言わんばかりに問うや、男性は苦笑混じりにそれに答えた。
「いや…やはり気になるものでして、王に今後どの様に為さるか御伺いしておったところに御座います。」
 話の内容から三人は、この初老の男性がダヴィッドの父であるフランツ・オッタヴィオ・ヴァートコルン侯爵だと気付いた。
 ヴァートコルン侯は正装ではない上に場所も執務室であることから、直ぐに非公式の謁見であることは分かった。
「して、そなたはどうするつもりなのだ?」
 コアイギスは目を細めてそう問うと、ヴァートコルン侯は些か困った表情を浮かべて返した。
「そうですなぁ…。あれは嫡男と言えど放蕩息子。ここ数年は家に寄り付きもせず、私は無理にあやつに爵位を継がせるのは如何なものかと王へ伝えて参りました。ですが、王はどうあってもダヴィッドに爵位を継がせよと仰せでして…。」
「そうか…では、我等も話しに行くとしよう。」
 コアイギスがそう言うや、ヴァートコルン侯は直ぐ様その身を壁際に寄せて道を開けた。
 そうして後、コアイギスはルーファスらを引き連れて執務室の扉を叩いたのであった。
「入れ。」
 執務室からはその一言だけ聞こえた。そのため、五人は直ぐに扉を開いて中へと入った。
「何だ、コアイギスか。で、後ろにぞろぞろと…一体何事だ。」
 王はあからさまに面倒と言わんばかりの表情を見せた。聞かずとも分かると言った風である。
「王よ、我等はダヴィッド・イグナーツ・フォン・ヴァートコルン殿の事で参った。」
「その件であればもう決まった。先にヴァートコルン侯が来ていたからな。」
「して、どうされるおつもりか?」
 コアイギスのこの問いに、王は迷いもせずに答えた。
「爵位はダヴィッド以外認めん。」
 そう返されたコアイギスは眉を潜め、一歩前へ歩み出て何か言おうとするや王が言葉を繋いだ。
「そう怖い顔をするな。何もマルティナ嬢と婚姻を結ぶなとは言っておらん。」
 その一言に、皆
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ