第一章
XXI
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ーファスは改めてコアイギスを恐ろしいと感じた。それを悟ってか、コアイギスが半眼になってルーファスへと言った。
「アダルベルト。今、何を考えた?」
「い、いえ…何も…。」
コアイギスの問いに、ルーファスは目を游がせて冷や汗をかいている。
そのやり取りにヴィルベルトは吹き出しそうになるのを堪えていたため、ルーファスはそんな弟子を軽く小突いた。
それを見たコアイギスは、やれやれと言った様子で口を開いた。
「アダルベルト、それがお前の弟子か?」
「そうだ。」
ルーファスがニッと笑ってそう返したため、ヴィルベルトは慌てて自己紹介をしたのであった。
「失礼しました!お初にお目にかかります。僕はヴィルベルト・レームクールと申します。」
「レームクール…あの商家のレームクールか?」
コアイギスにそう問われたヴィルベルトは少し体を強張らせたが、直ぐに気を持ち直して「はい。」と答えた。
コアイギスはヴィルベルトの些細な変化に気付いてルーファスへと視線を向けると、ルーファスは目でそれ以上この話題に触れぬ様合図を送った。それを察し、コアイギスはもう家のことについて問うことはせず、話を先の話題へと戻したのであった。
「で、先の話だが…今、王は女公爵と謁見しておる。気付いているかと思うが、王はダヴィッドの爵位譲渡を認めぬと仰せだ。それを女公爵が説き伏せようとしている…と言ったところだが…。」
そう言ってコアイギスは溜め息を洩らし、ウッドドールが淹れたお茶を啜った。
そのコアイギスの話に、今まで黙していたウイツが口を開いた。
「王は…何故ダヴィッドの爵位譲渡をお許しにならないんだ?もう何年も家を出ていたと言うのに…。」
そのウイツの独り言とも取れる問いに、コアイギスはその表情を変えた。
どうやら答えを知っている風ではあるが、それを話すことは躊躇われる…と言った様子なのである。
「師匠、何か知ってんだったら教えてくれよ。」
ルーファスはコアイギスの表情を読み取って問うが、コアイギスは眉を潜めて声を低くして返した。
「それは話せん。それを話すには王の許可が必要だからな。」
そう言われては、流石のルーファスもそれ以上問えなかった。
暫しの沈黙の後、ふとウイツがコアイギスへと問い掛けた。
「コアイギス師。それで…ダヴィッドはどこへ?」
「彼は今、この城の一室に幽閉されている。それと言うのも、彼は頑なに王の命令を拒んだため、王は直に幽閉を決めたのだ。」
コアイギスがそう答えると、ルーファスは難しい顔をして言った。
「会ことは?」
「無理だな。その事についてもあの女公爵は説得しておるだろうが、かれこれ二時間近くは話し込んでおるからな。」
そう言ってコアイギスは何度目かの溜め息を溢した。
しかし、これからが大変で
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