第一章
XX
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「ヴィー、大丈夫か?」
「うぅ…うぇ…。」
三人は何事もなく宿の部屋へと着いていた。若干一名、魔術酔いに顔を青ざめさせてはいたが。
「またこっそりやってやれよ。」
ウイツは苦笑しながらルーファスへと言うと、ルーファスは頭を掻きながら返した。
「ったく仕方無ぇなぁ…。ほれ、ヴィー。」
そう言ってルーファスはヴィルベルトの頭に手を乗せると、直ぐ様呪文を唱えた。すると、ヴィルベルトの体からダルさが一気に消えたのであった。
「師匠…僕、やっぱり移転魔術は無理かもです…。」
「そうだな。ま、これも慣れだ。近い内に教えっからな。」
「えぇっ!?ま、まだ早いです!」
ヴィルベルトは再び顔を青ざめさせ、本気で慌てふためいていた。そんな彼を見て、ルーファスとウイツは一頻り笑い転げたのであった。
「お二人共、そんなに笑うことないじゃないですか!」
ヴィルベルトは笑う二人に向かい、今度は顔を真っ赤にして怒鳴った。
そんな時、不意に扉が開かれて、そこから初老の男が姿を現した。宿の主人である。
「話し声が聞こえたもんで。いつお戻りで?」
「いや、ついさっき着いたんだ。」
宿の主人に、ウイツは些か困った表情で答えた。見えないとは言え、まさか部屋に魔術の陣を書いていた…などとは言えない。もしそんなことが知れれば、主人は直ぐ様宿を追い出すだろう。移転魔術は禁止されてる上…宿代を踏み倒して逃げることも出来るのだから。
尤も、前金にかなり支払ってあるのだから、別に追い出されることも無いとは思うが、やはり言わぬが花であろう…。
「そうでしたかい。言って下さりゃ湯を持ってこさせやしたのに。」
不思議そうに主人が言うと、今度はルーファスが苦笑混じりに返した。
「湯も欲しいが、出来りゃ先に軽い食いもんが欲しいとこだ。」
そうルーファスが言うと、ヴィルベルトも「そうですね。そして眠りたいです…。」と続けたため、主人は笑いながら三人に言った。
「そんじゃ食事を先に運ばせ、その後に湯を持ってこさせまさぁ。湯で体を拭きゃスッキリして眠れるってもんだ。」
「お、そりゃ有り難い!」
ルーファスがそう言ったため、主人は了承とみなしてニコニコしながら出ていった。主人の歳から察するに、ルーファスらは子供の様なのだろう。きっと帰ってくるまで心配していたため、声が聞こえたからわざわざ部屋へ来たと思われた。
主人が出ていってから暫くすると、三人へと食事が運ばれてきた。三人はそれを平らげると、後に運ばれてきた湯で体を拭き始めた。
「師匠もですけど、ウイツさんも傷が凄いですよね…。」
「ん…?ああ、これかい?私も結構旅をしていたからね。それに、訓練中に負った傷もあるから。」
ヴィルベルトの問いに、体を拭きならが答えた。
確かに、ウイツもルー
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