第一章
XX
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ト君、着いたよ。」
「…え?」
それは瞬く間…と言う喩え通り、一瞬と言って良かった。そのため、ヴィルベルトは呆気にとられて間の抜けた返答をしてしまったのであった。
ヴィルベルトが外を見ると、確かに景色は違っていた。
「さ、降りよう。街長に挨拶しないとならないしね。」
「こんなに早いなんて…。」
ヴィルベルトが未だポカンとしていると、外からルーファスが声を掛けてきた。
「おい、早く降りてこいってぇの!」
「分かってるよ。ほら、ヴィルベルト君。」
「は、はい。」
促されるまま馬車を降りると、そこは街長の館であった。正確には裏庭の一角であるが。
「師匠。今回、僕酔わなかったんですけど…あの呪文って…。」
馬車から降りるなりヴィルベルトが問ったため、ルーファスはニッと笑って弟子に答えた。
「ありゃ魔術を掛け合わせたやつだ。距離もあったし重量もあったから、わざわざ三重に魔術を行使したんだよ。」
「三重って…あの呪文だけで…ですか…?」
「そうだが?何か不満でもあんのか?」
「い…いいえ。」
ルーファスの返答に、ヴィルベルトは改めて自分の師がただ者ではないことを実感したのであった。
ウイツはそんな二人に苦笑しつつ、館へ向かうよう二人を促したのだった。
そうして三人が館へと向かおうとした時、館から一人の痩せた老人が姿を見せ、驚いたように大声で言った。
「これは、ウイツ殿ではありませぬか!」
老人はそう言って三人の所へと慌ててやってきた。彼が街長のロヴスである。
「只今戻りました。長く抜け出してしまい、申し訳ありませんでした。」
「訳はバーネヴィッツ公殿より聞いておりますぞ。ルーファス殿にヴィルベルト殿もさぞお疲れでありましょう。さぁお三方、中へお入り下さい。」
そう言われた三人は、街長の話に不思議そうに首を傾げた。何故かと言えば、女公爵がなぜ街長にわざわざ会いに来てまで話をしたか…ということである。
しかし、街長はそんな思いなど分かろう筈もなく、三人を室内へと招き入れて言った。
「大した持て成しも出来ませぬが食事を御用意させて頂きます故、暫し御待ち下され。」
そうして街長は直ぐに部屋を出ていった。恐らくは使用人に用を伝えに言ったのであろう。
「ってか、何で叔母上が街長に?」
ルーファスはウイツに問ってみたが、ウイツには返答出来なかった。
確かに、ウイツは王都からこの街に仕事できていた。それも街長の依頼でである。そんなウイツですら、街長と女公爵の関係は知らされてないらしく、正直、街長自身のことは全く知らないと言うのが本音であった。
「さぁね…。私だって全てを知らされてる訳じゃないから、どうなってるか知りたいのは寧ろこちらだよ。」
ウイツがそう言って溜め息を吐いた時に街長が戻ってきた
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