第一章
XX
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はなしに答えた。
「ん…王に報告せず爵位譲渡は出来ないから、先ずは全て話さなくては…後々大変だよねぇ…。私もあの街に帰らないとならないし、明日にでも行ったほうが良いかもね。」
それを聞くや、ヴィルベルトは自分が墓穴を掘ったことに気が付き、一気に顔を蒼冷めさせた。
「えっと…ファルまで戻るにはかなり…」
「いや、移転の陣は街長の館の庭に書いてある。何、ルーファスの力だったらあっという間だよ。」
ウイツは眩しすぎる笑顔でそう言うが、ヴィルベルトにはそれが悪魔の笑みに見えて仕方無い。
「いや…そうでなく…」
「ヴィー。これも修行だ。」
ヴィルベルトの思いを知り、ルーファスはそういって弟子の肩をポンと叩いたのであった。
「……。」
ヴィルベルトはもう後戻り出来ぬと諦め、再び魔術酔いする自分の姿を想像しながら体を拭いたのであった。
その後、三人はベッドに入って眠り、目覚めと共に行動を開始した。
先ずは宿を引き払い、街の外にある草原まで馬車で移動した。街には陣を書ける場所が無かったのである。
「この辺でいいんじゃねぇか?」
ルーファスがそう言って馬車を停めると、ウイツは馬車の窓から外を見て返した。
「そうだな。ルー、描けるか?」
「ああ、大丈夫だ。こんだけ空気が澄んでりゃ、デカイの描いても行使できるしな。」
そうウイツに言って、ルーファスはレジィーヒの街でやったように空へと陣を描きはじめた。
今回は馬車も含めるために大きな陣を描かねばならず、ルーファスであっても些か時間が掛かった。その間、ヴィルベルトは一人憂いに沈んでいた。その顔は蒼冷め、まるで死刑囚が最期の時を待っているかのようで、ウイツは苦笑いして彼に言った。
「そのうち慣れるよ。」
「そのうちって…いつですか…?馬車だってそのうち慣れるって七歳の時に言われましたけど…今も駄目なんです…。」
「…えぇっと…。」
そう言って半眼で見据えるヴィルベルトに、ウイツは口ごもってしまった。これはもう無理…とはさすがに言えず、彼は外方を向いて視線を泳がせるしか出来なかったのであった。
その時、外からルーファスの声が響いた。
「現れよ!」
どうやら陣が完成したようである。そのため、ルーファスは立て続けに呪文を口にし、ヴィルベルトの表情を硬化させたのであった。
「時と空間よ、我が願いに応じ、今在る場と彼の場とを繋ぎて我等を運べ!」
その呪文に、ヴィルベルトは目を丸くした。短縮呪文ではないだけでなく、正式な呪文ですらなかったのである。
だがしかし、ヴィルベルトがそれを問う間も無く、直ぐに魔術は発動したのであった。
ヴィルベルトは再び来るであろうあの感覚に備え、ギュッと目をつむって体を強張らせていたが、直ぐにウイツの声で目を開いた。
「ヴィルベル
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