第一章
XX
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ファスもその体にかなりの傷痕がある。しかし、ヴィルベルトはそれだけに関心があったわけではないようであった。
「でも…そんな風になりたいです。僕なんて大して筋肉もないし…。」
それを聞くや、ウイツもルーファスも互いに顔を見合せて苦笑した。
ルーファスとウイツの師は違えど、二人の師は非常に厳しい人物であった。当然ながら、魔術師は魔導師を目指すために文武両道に秀でていなくてはならない。それ故、二人は日々鍛練に明け暮れることとなり、謂わば自然とこうなったのである。
正直な話し、二人にはここまで遣る気など無かったのであるが…。
「そんじゃ、ヴィー。次から剣術と護身術の訓練を五倍にしてやろうか?」
「…師匠、それじゃ半日は訓練に割かれます…。旅、止めてくれますか?」
「…そりゃ無理だ。」
ルーファスが明後日の方向を見てそう呟いた時、不意に扉が開いて一人の娘が姿を見せた。年若く、恐らくは雇われ女中だろう。
「お湯は…キャッ!」
娘は三人を見るや、ポッと顔を赤らめて直ぐに扉を閉めてしまった。それもそうだろう…男三人が湯で体を拭いていたのだから。娘は足湯程度だと思っていたのだろう。
「師匠!いい加減に下、着けて下さい!そう言えば、ここ宿屋ですよ!?」
「金払ってんだから良いじゃん。別に減るもんじゃねぇしよ。」
「そう言う問題じゃありません!マナーと羞恥心の問題です!」
その後もヴィルベルトはルーファスへと小言を連ねたため、ルーファスは仕方無く…腰布を着けたのであった。
「ルー…お前は本当、そう言うとこは変わってないな。あれは確か…十八の時だったか?学内で暑いからと言って、一人素っ裸で水浴びしたのは…。」
「あぁ…そんなこともあったっけなぁ。」
ルーファスはウイツとヴィルベルトから視線を反らした。
「あったっけなぁ…じゃない。少しは恥じらいと言うものを身に付けろと言ってるんだ。こういう公共の場では特にな。」
「分かったよ…小言はヴィーだけでたくさんだ…。」
「分かれば良いんだ。」
満足気なウイツに対し、ルーファスは二人の小言に溜め息を吐いたのであった。
そんな会話をしていたからか、三人はふとあることに気が付いた。
「あ…もう少しでダヴィッドのこと忘れるとこだった…。」
「そう言えば…そうですね。そろそろご実家に婚姻の意思を伝えるんじゃないですか?」
ヴィルベルトが師にそう問うと、ルーファスは腕を組んで眉を潜めた。
「いや、あいつ…婚姻結んでから言い出すんじゃねぇか?」
「事後承諾って…危険ですよね…?ウイツさんはどう思いますか?」
今度はウイツへとヴィルベルトは話しを振った。如何せん、師であるルーファスでは、こう言った話を面白おかしくしてしまいそうだったからである。
すると、ウイツはその問いに何と
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