第一章
XIX
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
死者を葬り終えたルーファスらは、教会前でグスターフと対峙していた。これから行うことが、ここでの最後の仕事なのである。
「グスターフ、本当に良いのか?」
ルーファスは険しい表情でグスターフに尋ねた。それに対し、グスターフは微笑を浮かべて返した。
「ああ、構わん。私が存在する以上、この力はどこまでも世を冒す。」
「なら…最期に言っておきたいことはねぇのか?」
「無い。私の真実の姿を知る者は皆、先の戦で地に還った。今更何を言い残すのだ?愛する者と滅ぶなら、これ以上の至福がどこにあるというのか?」
グスターフがそう言った時、黙っていたヴィルベルトが手前に出て言った。
「僕達が知りました!だから…そんな悲しいこと言わないで下さい!」
ヴィルベルトは悲痛な表情を見せていたが、グスターフはそんなヴィルベルトへとただ、微笑んだ。
ルーファスは尚も何かを言おうとした弟子を制し、その耳元でそっとある提案をした。
「えぇ…!?師匠…そんなこと…」
「やってみねぇと分かんねぇだろ?」
その師弟の会話に、後ろに下がっていたウイツが首を傾げた。そんなウイツにルーファスは同じことを耳打ちすると、ウイツも目を丸くして言った。
「ルー…いくらなんでも…」
「分からねぇっつってんだろうが!そら、やるぞ!」
こうなってはやるしかないと、ヴィルベルトとウイツは仕方無く行動に出た。
そこで、初めにウイツが呪文を唱えた。
「在りし日の残像、過ぎ去りし記憶、時を逆巻き、今此処に汝の在りし日の姿を垣間見せよ!」
ウイツが行使した魔術は、特定のものから記憶や記録を抜き出して投影する魔術であった。ウイツはそれをグスターフへと行使したのである。
すると効力は直ぐ様表れ、グスターフの傍らに女性の姿が浮かび上がった。それはセシルの真実の姿であった。
それを見たヴィルベルトは、直ぐ様次の魔術を行使した。
「大地を覆う元素、我が命に従い、我が思いを型と成せ!」
それは以前に土人形を造った造形魔術であった。その呪文も直ぐに効力を発揮し、シセルの幻影と重なる様に形作られ、まるで生きているかの如くに精巧な造りをしていた。
そして…。
「光を構成する七つの色よ、我が手に集え!」
全てを完成させるべくルーファスが色彩魔術を施すと、それは生きた人間と見分けがつかぬものとなった。
全てを静観していたグスターフは、ただただ感嘆の表情を見せるばかりであった。まさかこの三人の魔術師が、この様な魔術を行使するなど考えもしていなかったのである。
しかし、これだけではなかった。ルーファスはその後、こう言ったのである。
「おい、セシル。力が弱くなっても意識はあんだろ?お前、その器ん中に入ってみろ。」
「おい、何を…」
グスターフがそう言いかけた刹那、
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ