第一章
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空には夕の紅と夜の藍が重なりあう。月がその光を誇示し始め、その光に星々が従うように瞬いている。
塔の前では、グスターフが中に赴いて半時程が経っていた。三人はそれぞれ黙していたが、ふとヴィルベルトが師へと問い掛けた。
「師匠…グスターフさんが言ってたことって…。」
「あれか。ありゃな、謂わば妖魔にとって死の魔術だ。魔術によって妖魔になったんだから、その逆をすれば全てが分解しちまう。」
「それじゃ…。」
ヴィルベルトは眉を潜めた。その意味をやっと理解したという風である。
「そうだ。あいつ…終らせろと俺に言ったんだよ。」
師の答えに、ヴィルベルトはただ俯いた。隣に立つウイツも居た堪れないと言った様子であったが、何かに気付いて上を見上げると、塔の最上階より何かが落ちてくるのが見えた。
「おい、ルー…」
そう言ったルーファスを呼ぶより早く、それは目の前の地面に叩き付けられた。
叩き付けられたそれは…グスターフであった。頭は割れて手足は有り得ぬ方向へと曲がっており、ヴィルベルトはそれから視線を逸らした。だが、ルーファスがそれを見ていると、さして時を経ぬうちにその体は修復され、グスターフは何事もなかった様に立ち上がったのであった。
「済まない。嫌なものを見せてしまったな。」
「お前…大丈夫なんか?」
ルーファスが問うと、グスターフは「どうと言うことはない。」と返し、そしてこう付け足した。
「そんなことを話している時ではない。妻が来るぞ。」
「どう言うことですか?」
師の後ろよりヴィルベルトが問うと、グスターフは溜め息を吐いて返した。
「私と共にあってほしいと言ったら、何故か怒りだしたのだよ。」
グスターフがそう言うと、ルーファスらは深い溜め息を吐いた。
「お前なぁ…始めからしっかり説明したんか?」
呆れ顔でそうルーファスが問うと、グスターフは怪訝な表情を浮かべて返した。
「いや…通じると考えていたのだが…。」
その答えに、三人は再び溜め息を洩らした。そして、今度はウイツがグスターフへと言った。
「グスターフ殿…何故こうなってしまったかの説明はしたのですか?」
「…言い訳は男らしくない。」
その答えに、ルーファスは苛ついてグスターフに怒鳴った。
「そうじゃねぇだろ!恋や愛なんてぇのは神聖な反面、すげぇ泥臭ぇもんなんだよ!セシルはお前の泥臭ぇ言い訳がほしかったんじゃねぇのか?こんなんなっても一緒に居てぇんだったら、どんなに罵られようがセシルが納得すんまで言い訳してやりゃ良いんだっつぅの!ま、どんな女でもって訳にゃいかねぇけどよ。」
ルーファスにそう言われたグスターフは、眉間に皺を寄せて考え込んでしまった。どうやら、こういった事態を想定していなかった様である。
その時、彼らの前に靄の様なもの
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