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魔術師ルー&ヴィー
第一章
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が、それは今までのセシル自身のものとは質が異なり、グスターフ…シェオールの力が加わっていたのであった。
 もし仮に、このままシセルがこの街の結界を破れば、周囲に点在する村や町はたちまち死者の園と成り果ててしまうだろう。
「お前…どうして…。」
 邪気に耐えながらルーファスがそう問うと、セシルは憎しみを顕に言った。
「どうして…だと?この男をどうして…と言うことなら簡単だ。男など、所詮は皆嘘をつく。女を道具としてしか見ようとしない。お前とてそうだろう?女は抱くための…快楽の道具。そして家を繋ぐ子を産む道具。子を産むことが出来なくば、出来損ないの欠陥品なのだよ。」
「だが、グスターフの愛は真実だったぞ。」
「愛?それが何だと言うのだ。そんなもの…生ける者の戯言だ。魔術師よ、お前達はここで死ね。私はこの力で、この醜い世界を打つからな。」
「…!」
 その言葉に、ルーファスらは表情を強張らせた。三人はそれぞれセシルを止めようと試みるが、邪気が強すぎて結界を維持するのがやっとの有り様である。
 しかし、暫くして事態は一変したのであった。
「なんだ…これは…!?」
 三人は自分の目を疑った。邪気に押される三人の前に、生ける屍が集まってきていたのである。それはしだいにセシルを取囲み、それに驚いてセシルは力を発動出来なくなった。
「ルー…これは…。」
「教会前で眠ってた奴らだな…。だが…力どころか肉体すら残ってなかったってぇのに…。」
 二人がそう言っている間にも、生ける屍は次々にセシルへと押し寄せていた。
 それは、まるで彼女からグスターフを取り返そうとしている様であった。その証拠に、屍達が集まる程にセシルの力が弱まっていったのである。
 セシルが発した邪気も薄れゆき、ルーファスらは結界を解いた。この屍達が襲ってくることはないと確信していたからである。ヴィルベルトだけはビクビクしてルーファスの後ろに隠れていたが。
 ルーファスらは暫く屍達の表情を見ていたが、そこから何かを読み解くことは出来なかった。何故にこの様な行動に出たかは理解出来なかったのである。
「おい、ウイツ。あれ…。」
 夕日も落ちた月明かりの中、ルーファスは見覚えある屍を見付けてウイツに指差した。
「…ああ、グスターフが器として使っていた…。」
 それは少年の屍であった。その表情には、明らかに哀しみと怒りが見て取れた。その感情はグスターフにではなく、その体を支配しているセシルへと向けられていることは二人にも理解出来た。
 暫く三人は何もせず、ただ屍達を観察し続けていたが、そうしているうちに屍達が何かを言っていることに気が付いた。
 が、それを聞き取ることは難しく、どうにか口を読もうと試みたのであった。しかし、その大半にもはや唇と呼べるものはなく、カタカタと剥き出し
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