第一章
XZ
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るや、魔術師らは恐怖して彼を<シェオール>と呼んだと言う。
しかし、グスターフ自身は人間の心を喪っておらず、戦う意思なぞ端から無かった。そのため、彼は無意識に溢れる邪気を人に触れさせぬ様、一人ツィヴリング山脈へと入ってその身を世間と断絶したのであった。
暫くの後、彼はツィヴリング山脈を越えてリュヴェシュタン王国へと入っていた。そして…このレヅィーヒの街に足を踏み入れてしまったのである。
彼は人が恋しかった。一人山脈を彷徨う中、彼は幾度も死を試みたが、それが叶うことはなかった。どれだけ高い崖から飛び降りようとも、彼の体は直ぐに修復されてしまうのである。たとえどんなに砕け、裂けようとも…である。
それは何故か?その答えは、彼と融合させられた悪魔に由来しているのである。
その悪魔は、在りし日に還ることを切望していた。自ら悪であることを嘆き、そして自らを長い時の中で呪い続けていた。しかし、その力が衰えることはなく、一人彷徨するしか出来ぬ中で人間の実験のために召喚されたのであった。
悪魔はまるでグスターフの哀しみと呼応するかの様に彼に融合し、一言だけ「済まない。」と言ってその精神さえ消滅させてしまったのであった。
それは、この悪魔にとっては唯一の救いだったのかも知れない。
だが、グスターフには悪魔の力と哀しみを制御することは不可能であった。それは一方的に与えられたものであり、まるで舵の無い帆船と同じなのである。
それでも、グスターフは諦めることなく様々なことを試したが、そのどれも大した効果は得られず、人恋しくなって少しでも人里に下ればこの有り様である。
そして、辿り着いたこの街で、わざと魔術師達に封じられたのであった。
「最初に会った時の器…あれは父母の死に絶望した少年だ。彼は封じられた私の元へと来て、私にこう言ったのだ。"僕の体を使って。その代わり、僕を父様と母様に会わせて"…とな。成る程、シェオールという名は当たっているかも知れないな。」
そう言ってグスターフは淋しげな笑みを浮かべた。
ルーファスらは何も言えなかった。妖魔と成り果ててさえ人の心を喪うことが出来ず、その力さえ制御出来ずにいる彼を、ただ絶望だけが支配していた。
その様な彼に、一体なんと声を掛けられよう。この先もまた、それは延々と続いて行くのだと考えると、ルーファスは自分に何か出来ないかと自問してみるが、そこで答えを導くことは出来ようもなかった。
後ろを歩くヴィルベルトとウイツも同様、三人はただ重く口を閉ざして歩くしか出来なかったのであった。
グスターフが話終えて暫らく歩くと、街から抜けて野原になった。そして目の前には天高く聳える北の塔が現れた。
その塔は主を失って久しく、壁は所々朽ち落ち、外観は街の家々と然程変わるものではなかった。良く
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