第一章
XZ
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怖くはないのか?」
「はい。僕には師匠とウイツさんがいますし、このラファエルの涙にも護られてます。怖くなんてありません。」
そう返されたシェオールは、一つ溜め息を吐いて言った。
「全く…変な奴だ。私は数え切れぬ程の人を殺めた。それでも恐れぬのか?」
「はい。だって…それは貴方のせいじゃないじゃないですか。ああして死者を弔って長い歳月を一人で過ごしてきたと思うと、僕はとても悲しいです。人のしたことで誰かが苦しむなんて、本当はあっちゃいけないんです。だから…貴方の名前を教えて下さい。」
真顔で答えたヴィルベルトに、シェオールは笑い出した。それにはヴィルベルトだけでなく、ルーファスもウイツもギョッとしてしまったのであった。今まで会った妖魔で、この様に笑う妖魔なぞいなかったからである。
「いや…本当に可笑しい。お前の言いたいことは分からんではないが、結局は人を傷付けるのは人なのだよ。自然の摂理以外ではな。我々のような存在は、敢えて傷付けるために創られた。謂わば武器だ。ただ、その力を制御出来なかったに過ぎないのだから、そんなものに名があろうがなかろうが同じことだ。」
「違います!僕は…」
「分かった分かった。もう何を言うこともない。私の名はグスターフだ。グスターフ・フォン・ミルシュタインだ。」
そう名乗られるや、三人は再びギョッとして互いに顔を見合わせた。
それに気付いたシェオール…いや、グスターフは、ふと三人へと言った。
「どうした?」
それにどう答えるべきか、三人は暫し考えたが、最初に口を開いたのはルーファスであった。
「お前…公爵だろ?」
「如何にも。今はこの様な下賤の輩と成り果ててはいるがな。尤も、先の戦で戦死したことになってる様だが。」
「そんじゃ…ミストデモンにされたセシルの…。」
「そうだ。彼女は私の妻だ。今でも私はそう思っている。たとえどの様な姿となっても、私は彼女がわかる。彼女のことは聞き及んでいるのだろ?」
「ああ、聞いてる。たが、なぜ実家に帰したんだ?」
そう問われたグスターフは、深い溜め息を吐いて「ま、歩きながら話そう。」と言って再び歩み始めた。そんなグスターフの後ろに、三人は静かについていったのであった。
静寂に包まれた廃墟の街に、四人の足音だけが響いている。空を見れば夕の紅と昼の蒼が重なり、気の早い星が一つ瞬いていた。下界のことなぞお構い無しに、それは穏やかな光景であった。
そんな空の下、グスターフは語り始めた。それは遠い過去の記憶であり、伝えられなかったもう一つの歴史でもあった。
彼曰く、ミストデモン…セシルを実家へと返すつもりなどなかった。
グスターフは長男であり、父の公爵が病に臥せったため、若くして公爵位を継がされた。父の病が治らぬものだったからである。
その父である
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