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魔術師ルー&ヴィー
第一章
XZ
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人は地上へ出ると、直ぐに教会を中心に死者の上にも結界を張った。
 暫くすると、地下より凄まじい気が吹き出してくるのが理解でき、三人は結界を制御することに集中した。
 邪気が一旦収まった時、三人は結界を解いて集まった。屍は全くの無傷である。
「ヴィー。お前には少しばかり悪いから、これ持ってろ。」
 ルーファスはそう言うや、弟子に“ラファエルの涙"を渡した。
「師匠、これ…」
「何も言わんで持ってろ。俺とウイツは邪気に慣れてっけど、お前はこんな経験したこと無ぇんだからよ。」
 そう師に言われ、ヴィルベルトはそれを受け取った。すると、ヴィルベルトは今まで感じたことのない不思議な安堵感を覚え、ラファエルの涙をまじまじと見つめた。
 掌で転がる石。それは淡く透明な青で、とても小さなものであった。だが、その秘められた力は見た目とは裏腹に強大であると確信した。
「ルー、それはミストデモンを倒すために使うんだろ?」
「まぁな。だが、その必要は無ぇかも知んねぇけどな。」
「…どう言うことだ?」
 ウイツは首を傾げたが、そうしている間にあの地下への階段から人影が現れた。
 シェオールである。その腕には、先程まで憑いていた少年の亡骸があり、シェオールはそれを教会前へと運び、空いている場所へと静かに置いた。
「済まん。私にはこれしか出来ないが、ゆるりと休んでほしい。」
 少し離れた場所に立つ三人の耳にも、そのシェオールの小さな声が響いた。
 シェオールは暫く死者を弔うかの様に瞳を閉じ、そして瞳を開くや立ち上がって言った。
「それでは約束通り、北の塔へ案内しよう。ついてこい。」
 シェオールにそう言われた三人は、信用仕切れないながらも後に続いた。
 シェオールの外見は美しい青年である。その衣服は、どう見ても貴族のそれであり、気になっていたウイツは道すがら問い掛けた。
「お前は…人であった時のことを憶えているのか?」
「全て憶えている。」
 シェオールは直ぐに返した。問われることを予想していた風である。
 ウイツはそんなシェオールに再び問った。
「では、本当の名は何と言うのだ?」
「それを聞いてどうする?私はもはや人ではない。人を殺める道具と成り果てたのだからな。」
 淡々と返すその言葉の中に、ウイツもルーファスも苦しみや痛みを見い出していた。しかし、それに気付かないヴィルベルトは、シェオールにこう問ったのである。
「名前を聞かないと、何と呼んで良いか分からないです。」
 それにシェオールは眉を潜め、一瞬ヴィルベルトを見て言った。
「ならばシェオールと…」
「いえ、それは貴方の名前じゃないです。僕は貴方を名前で呼びたいんです。」
 すると、シェオールはピタリと足を止め、目を丸くしてヴィルベルトを見た。
「可笑しな奴だ。私が
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