第一章
XZ
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な。私の体を解放してくれるとは。」
その声に驚き、三人は直ぐ様振り返った。
すると、そこには見知らぬ少年の姿があった。いや、少年だったもの…と言うべきかも知れない。
そこに立っていたものは、皮膚は焦げ茶より少し黒ずみ、その一部は崩れ落ちていた。片方の目は黒い穴だけが見え、もう片方も混濁している。
そこに立つものは…紛れもなく死者であった。
「ルー。あれは何だ?」
「ん?生きた屍ってヤツじゃねぇのか?」
「二人共、そんな暢気にしている場合じゃないでしょ!?」
ヴィルベルトだけが気が気ではない。だが、二人が暢気に構えているのには理由があるのである。
その理由とは、目の前に立つ者の姿がどうあれ、自分たちに敵対していないと分かっていたからである。
三人の前に立つそれは、全く邪気を放ってはいなかったのだ。
「お前がシェオールか?」
「そうだ。」
ルーファスの問いに、それは端的に答えた。そしてこう続けた。
「お前達、ここには"彼女"を追って来たのだろ?」
その言葉に、ルーファスはニッと不敵な笑みを浮かべて返した。
「お見通しってか。じゃあ聞くが、どこへいる?」
「街の北にある塔だ。私が体に還ったら、直ぐにでも案内しよう。」
それにはウイツとヴィルベルトが反応をしめしたが、ルーファスは相変わらず淡々と返した。
「体に還る?んでもって、俺達を殺すってか?」
「もはやその様な気は無い。それに、お前達は魔術師だろう?私の邪気にあたることはあるまい。それ以上に、この街に私を守れる屍はない。」
シェオールがそう言った時、三人は教会前に並べられた屍を思い出した。やはり、あれはシェオール自身が並べた様である。
「シェオール。あの教会前にあった骸は…お前が?」
ルーファスが問うと、シェオールは俯いてそれに答えた「そうだ。私がここへ来たために巻き込まれた者達だ。この街にはもう…弔う者さえ残っていない。私は教会内には入れない。それ故、ああして眠らせたのだ。」
「ここでも良かったんじゃねぇのか?」
ルーファスが不思議そうに問うと、シェオールは首を横に振って言った。
「いいや、ここは私を封じたために聖性が害われた。そして天の光さえ入ってこないここでは駄目なのだ。」
そう言うや、シェオールは顔を上げてルーファスを見た。
「お前達。私が体に還った時、そこから一気に邪気が放出される。地上に戻って結界を張っておけ。願わくば、眠りし者らの上にも張ってほしい。一人として吹き飛ばすことのないように…。さ、行け。」
そう言われたため、ルーファスはウイツとヴィルベルトを連れてそこを出た。ウイツは何か言いたげであったが、それをルーファスは制して地上へと向かった。ヴィルベルトは師に必死で付いて行くので手一杯な様子であった。
三
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