第一章
XY
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レヅィーヒの街とは、かの妖魔が産み出された街である。そして妖魔を造り出す媒体とされた少女の父が統轄していた街でもあった。
先の戦の終末、ミストデモンの力がシェオールと呼ばれる妖魔を引き寄せたとされる。シェオールはその強力な邪気で生ける者を歩く死人に変えるため、この街は瞬く間に地獄と化した。
シェオールの出現は直ぐに王都に知らされ、王都の魔術師らは速やかにレヅィーヒへと赴いたものの、もはや彼らに出来ることなど無かった。住人は全て生ける屍と成り果てて魔術師らを襲い、魔術師らはそれに対抗しつつ街ごと封印する他手立ては無かったと伝えられる。
魔術師らは先ず、シェオール自身を封印するためにシェオールの精神と肉体を分離させた。その折に聖ステファノのルビーが使用され、その力は一時ではあったが街の邪気を一掃したのであった。故にシェオールを封ずることが出来たのである。
だが、シェオールは肉体だけになっても邪気を放出し続け、結局は三重の封印をせねばならなかった。街全体の封印を合わせれば四重の封がされたことになる。記録では、住人は一人も助からなかったと記され、住人ごと封印されたことを物語る。
「さすがに…ここまで来れば感じるな…。」
そうウイツが呟くように言った。
ここはグリュネより七日程の場所で、レヅィーヒの街まではもうさしてかからない。
三人は途中ツィンクの村で食料などを調達し、馬車は宿屋の主に頼んでそこに置いてきていた。
この村より先は封鎖状態であり、暫く行けば邪気が漂い始めるのだ。故に、馬はとても耐えられず、三人は馬車を置いてきたのであった。尤も、誰も通らぬ道故に、そこには雑草が生えていた…と言うよりは、その枯れたものが道に覆い被さっていたために馬車など通れようもないのだが。
「師匠…草木もこんなで動物の姿もないですね…。」
ヴィルベルトは辺りを見渡し、どことなく不安気に師へと言うと、ルーファスは少しばかり弟子へと振り返って言った。
「ま、そうだろうな。シェオールを封じた土地の周囲は、どこもこんな感じで生気がなくて当たり前だかんな。」
「なぜですか?ミストデモンの封では、こんなじゃなかったと思うんですけど…。」
「ヴィー。“シェオール"ってのはな、古語で“墓"を示す言葉だ。あの妖魔はな、その強力な邪気で瞬く間に人を殺し、そして屍を自らの手駒として使役出来る。その元となってんのは奴の邪気そのものだかんな。封じたとこで邪気が漏れ出れば、当然こうなるって訳だ。」
ルーファスがそこまで言うと、今度はそれを先頭を歩いていたウイツが引き継いだ。
「そのシェオールが五つの妖魔の最上位になっているのは、それがシェオール自身の意思に関係なく邪気を放出しているからなんだよ。」
それを聞き、ヴィルベルトは思わず立ち止まってしまった。
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