第一章
XV
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爵家ですよね?」
ヴィルベルトは師にこっそりと問った。すると、ルーファスは直ぐにそれに答えた。
「そうだ。だが、うちとあの侯爵家とは関係が無ぇから、俺は長男の顔を見たこと無ぇかんなぁ。」
ルーファスがそうヴィルベルトに答えている時、女公爵は思い出す様に誰にともなしに言った。
「長男は長らく病で臥せっておると言っておったが…ロベルトの奴め、長男が家出しておることを隠しておったな…。」
そう言って再び腕を組み直し、深い溜め息を洩らしたのであった。
そこへウイツが帰って来て女公爵へと言った。
「無事出発致しました。一応馬車に軽減の魔術を施し、ダヴィッドには旅費と薬代とを渡しましたので問題は無いかと。」
そう報告しているウイツを女公爵だけでなく、ルーファスとヴィルベルトの二人もまじまじと見ている。それに気付き、ウイツは少しばかり顔を引き攣らせながら女公爵へと問い掛けた。
「…どうかされたんでしょうか…?」
その問いに、ルーファスが横から答えた。
「いや、ダヴィッドなんだがな…実は、ヴァートコルン侯爵家の長男だったってぇ話をしてたんだ。」
それを聞き、ウイツは暫く固まっていた。そうして後、「はっ!?」と間の抜けた返事をしたのであった。
「ルー…ヴァートコルン家って、あの上級貴族だろ?まぁ、お前のとこは別格だが、それにしたって…そんな家の長男がこんなとこへ居るなんて有り得ない筈だ…。」
ウイツがそう言うも、皆は一様に苦笑いする他なかった。ここで「何故?」と問われても、それに答えられる者は一人もいないのだから。
「ま、なんだ…。あいつが何で家を出たかは知らねぇが、今はマルティナんとこに居てぇから居るんだろ?別に良いじゃねぇか。」
ルーファスはそう言ったが、それに対して女公爵は難しい顔をして返した。
「家を出ても長男ということは変わらん。どのみち、このままという訳には行かんのだが…。」
「分かってるよ、叔母上。爵位後継を弟にするには、正式に王の許可が必要ってことはな。この件が片付いたら、俺もダヴィッドんとこに行くからよ。」
「師匠、面白がってないですか…?」
ルーファスをヴィルベルトが不信の目で見ている。こういうことに面白がって首を突っ込む師の性格を、ヴィルベルトは嫌と言うほど思い知らされているからである。それは女公爵やウイツも同様であり、二人共やれやれと言った風な表情を見せていた。
そんな三人に、ルーファスはニッと笑みを溢して言ったのだった。
「大丈夫だって。」
何の根拠があっての返事なのか問いたいヴィルベルトであったが、こうなった師を止められはしないと諦め、彼は話題を変えて言った。
「それより師匠、あの妖魔はどうするんですか?どこに行ったかなんて分からないじゃないですか。」
「いや、ルーだったから
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