第一章
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「だが、ファル。どうやって追うと言うのだ。見えぬではないか。」
女公爵は訝し気に大神官へと返した。相手は謂わば気体同然故に、その場にあっても分からないのである。
「侯爵の息子が居るじゃろうが。あやつであれば追える。わしは少しばかり力を使い過ぎたでな、暫し休むとしよう。」
「おい…ファル!」
女公爵が呼べど、もう大神官は返事をすることはなかった。
ふと顔を上げれば、倒れているアーネストの体へとサリエスが向かっており、そしてその体を抱え起こしていた。ファルケルの部下共は、その時でさえ乱れ惑っていた。
「兄上!」
サリエスは兄の体を揺さぶって声をかけ続けると、アーネストは意識を取り戻してその目を開いたのであった。
「ここは…どこだ…?」
何も分からないと言った風に周囲を見回すと、目の前のサリエスへと言った。
「何故この様な場へ?私は一体…何をしていた?」
「兄上…帰ってきて下さったのですね。今は何も考える必要などありません。さぁ、家に帰りましょう。」
サリエスはそう言ってアーネストと共に立ち上がったのであった。
サリエスはアーネストを支えて歩き出すと、不意にそれを何者かが静止させた。
「待て。」
二人は驚いて振り返ると、そこにはあのファルケルが悠然と立っていたのであった。その声も表情も怒りに満ちており、サリエスは気圧されながらもファルケルへと言った。
「何用です。貴殿が欲したのは妖魔の力…今の兄上は無用の筈です。」
「いいや…用ならある。」
ファルケルはそう言うや手を降り下ろした。それは攻撃の合図であり、二人へと無数の矢が放たれた。
「風よ、ここに集いて盾となれ!」
全てを見ていたルーファスは、ファルケルが手を降り下ろすと同時に二人へと防御の魔術を展開させた。それは放たれた矢を四散させ、二人には一本も届くことはなかったのであった。
「ったく、用が無くなりゃ後始末か?」
ルーファスは眉間に皺を寄せ、ファルケルへと大声で言った。それに対し、ファルケルも彼を睨み付けて返した。
「当たり前のことだ。我が尊き計画の枷となるならば、我はどの様な者も切り捨てよう。我は…」
そこまで言った時、ファルケルの声を掻き消して怒鳴る声が響いた。
「この大馬鹿もんが!散々放蕩した挙げ句に、なに偉そうなこと抜かしとるんじゃ!」
余りの大声に、その場にいた全ての者が呆気に取られた。
ルーファスらが声のする方を見るとそこには老女が居り、その老女はずかずかとファルケルの前に歩み寄ってその頬を思い切りひっぱたいて言った。
「罰当たりなことを言いおって!一人で大人にでもなったつもりか!」
「痛っ!何をするか!」
「何をするだと?わしゃお前を迎えに来たんじゃ!放蕩息子を母が迎えに来て何が悪いんじゃ!」
そこに現
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