第一章
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ルーファスは怒鳴った。すると、妖魔はニタリと笑みを溢して返した。
「もう止められない…私はそう申した筈。故に、貴殿方にはこの場にて死んで頂く他ありません。」
そう言って妖魔は一歩前へと踏み出したため、ルーファスも前へと踏み出した。その時、ルーファスはウイツに「防御結界の準備しとけ。」と小声で言い、ウイツはそれに頷いた。
「何故ここまでやる。」
ルーファスは妖魔を睨んでそう言うと、妖魔はさも不思議なことを聞くと言う風に肩を竦めて返した。
「何故?その様な解りきったことを言わせないで頂きたいものです。この世界に、貴族も王も必要ないのです。権力は人間そのものを喰らって大きくなった。故に、その力を人々に返すのは道理。」
妖魔がそこまで言った時、ルーファスの背後からサリエスが叫んだ。
「兄上!もうお止め下さい!」
その声に、妖魔はあからさまに顔を顰めた。
「ギルベルト家の末子か。未だ知らされていない様だが、私はアーネストと呼ばれていた男ではない。」
「何を言っておられるのです!?兄上、この様な場でご冗談を…。」
「冗談?」
サリエスの言葉に、妖魔は不愉快そうに顔を歪めて手を突き出して空を握った。すると、直ぐ様サリエスが地に倒れて苦しみ出したのであった。
「サリエス殿!」
もがき苦しむサリエスをウイツが抱え起こすと、サリエス「アーネスト…兄上…」とその名を呼び続けていた。
妖魔は苦しむサリエスを見てもあの厭らしい笑みを浮かべ、その力を緩める気はないようであった。そしてその力を更に強めようとした時、不意に妖魔の表情が変化した。
「な…っ!?」
妖魔はまるで何か恐ろしいものでも見たかのような顔になり、その顔から血の気が失せたのである。そして体を震わせて膝をついたのであった。
「どうなっておるのだ…?」
ルーファスの後ろより女公爵が呟くと、それに対し腕輪の宝玉から言葉が返された。
「恐らくじゃが…アーネストの精神が未だ残っておるのじゃろう。どれ、わしが出るとしようかのぅ。」
そうして言葉を切ったかと思うや、その場に大神官老ファルケルが姿を現したのであった。
周囲は騒然となった。と言ってもファルケルの部下共だけだが、どうやら老ファルケルの死を知らされていたらしく、恐れ戦くものも見受けられた。
だが大神官はそれをどうするでもなく、一言だけ妖魔へと言い放った。
「そは汝の体ではなし、直ちに出て行くが良い!」
その刹那、辺りは眩いばかりの光が満ち溢れ、光が消え去る頃には大神官の姿も消え去っていた。
「おい、ファル!これは一体何なのだ!?」
余りの事に女公爵が問うと、大神官は宝玉の中より答えた。」
「妖魔は一応出て行った。精神が全て破壊されとれば救えなんだが、ここにはラファエルの涙も有る故にな。」
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