第一章
XV
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んと言われとるんじゃ。」
大神官は目の前の妖魔…ミストデモンの声を無視し、そこまで一気に語った。ミストデモン自身も諦めたように攻撃の手を止め、その場にただ立ち尽くしていた。
そんなミストデモンに、大神官は再び口を開いた。
「汝、何故エネスを殺さなんだ。殺そうと思えば、いつでも出来たであろうに。」
その問いに、意外にもミストデモンは直ぐ様返した。
「我と同じだったのだ…。」
思わぬ答えに、ルーファスらは眉を潜めてミストデモンを見た。一体何を同じだと言うのかが分からなかったのである。
しかし、そんなルーファスらを他所に、大神官と女公爵はそれを理解していたようであった。
「エネスは…子を産めぬ体であったか…。」
女公爵がそう囁くように言うと、ミストデモンは寂しげな表情をして女公爵を見て言った。
「汝も同じようだな…。」
「ああ、我も同じ。子を成すことの出来ぬ体だ。しかし、我が夫はそれでも構わぬと言い、この我を迎え入れてくれたのだ。」
女公爵のその言葉に、ミストデモンは項垂れて返した。
「そう…か。我にもその様な者が居てくれたなら、また違った人生だったやも知れぬな…。だが、もう遅いのだ。動き出した歯車を止めるには…もう遅い…。」
そう言った刹那、ミストデモンはその姿を霞の如く掻き消し、後にはルーファスらと狼狽える村人だけが残されたのであった。
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