第一章
XV
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の主は姿を見せるどころか嘲る様に言葉を返した。
「おやおや、今度は何ですか?仲間意識ですか?くだらない…これだから人間は弱いのです。」
そう聞こえたかと思うや、不意にウイツへ向かって矢が飛んできたため、彼は剣で叩き落とそうとした。しかし、それはただの矢ではなかった。
「っつぅ…!」
ウイツはあまりの痛みに呻き、その場へと膝をついた。その頃にはルーファスも全員の解毒が終わっており、直ぐ様ウイツへと駆け寄った。
「ウイツ、大丈夫か?」
「こりゃ…たまらんなぁ…。」
見れば出血しているわけではない。ただ、痛みだけか残るのである。しかし、ルーファスにもそれが何なのかが分からずにいた。後ろではヴィルベルトらが心配そうに見ている。
「全く、何をしとるんじゃ。」
そこへまた声が響いたが、それは女公爵の腕輪からであった。
「大神官殿…これは何なんですか…?」
ウイツは未だ痛みが取れずに顔を歪めながら問うと、大神官は事も無げにこう答えた。
「それは光の矢じゃよ。外傷が出来る訳ではないが、精神に直接作用して痛みを齎すのじゃ。随分と古い魔術で、今もこれを扱えるやつは幻視使い位なもんじゃ。ま、妖魔は別じゃがの。」
大神官はそう言って悠長に笑っていたが、やられたウイツにしてみれば笑い事では済まされない。だが、そんなウイツに大神官が祝福を与えると、その痛みは瞬く間に消え去ってしまったのであった。
「大神官殿…助かりました。」
「いや、これくらいどういうこともないわい。」
そう大神官が言った時、ルーファスらの目の前に憎々しげな表情を見せてアーネストが姿を現した。
アーネストに最初に気付いたのは女公爵であり、彼女は直ぐに彼へ…いや、彼の中の妖魔へと眉を潜めて問った。
「汝、何故にこの様なことを?」
その問いに、妖魔はニタリと下卑た笑みを浮かべながら返した。
「あなた方が邪魔なだけです。全く…第二位と第四位の魔術師と女公爵、その上にかの大神官の記憶の断片とは…。あなた方は私にとって禍。故に、その禍の根元を断つことは利に叶うこと。」
その顔を狂気で歪ませながら妖魔はそう言った。それには流石の女公爵もゾッとしたのであった。ルーファスやヴィルベルト、ウイツすらも嫌な汗をかいていた。
そこで、今度は大神官が妖魔へと話し掛けた。
「貴様のことは知っておる。今は棄てられたかの街にて行われた魔術実験により生まれた妖魔であろう?元は伯爵の一人娘であった…」
「それ以上語るな!」
妖魔はカッと目を見開くや再び光の矢を放ったが、今度はルーファスの魔術によって阻まれた。そして大神官は再び語りだした。
「汝は憎しみより産み落とされた。じゃが、今も人間の心を保っておろう。そうでなくば、あのエネスに封じられることはなかったはずじゃからな。」
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