第一章
XV
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束縛にもがきながらも言い返した。
「こんな姑息な手を使うとは!だから魔術師は…」
そこまて言った時、村人は悲鳴を上げた。ルーファスが力を強めたのである。
「ま…待ってくれ!話す、話すから!」
目の前の男が痛みに堪えかねてそう言うや、ルーファスは溜め息混じりに言った。
「ったく…始めっからそう言ゃいいのによぅ。」
そうしてルーファスは束縛の力を弱め、再び男へと問った。
「で、誰に言われてやらかしたんだ?」
「お前の察し通りだ。昨夜ファルケル様の使いの者がきて、お前等が来ることを聞いた。ファルケル様の使いはお前等を敵だと言い、殺さねばならねぇと言われたんだ。そん時に白い粉を渡され、そいつを酒にでも入れりゃ楽に殺れるとも…。」
ルーファス等はそれを聞いて深い溜め息を洩らした。
ファルケルの使者が渡した白い粉は眠り薬の類いだったことははっきりしているが、何故毒薬ではなかったのか?
先ず、この時代の毒薬はかなり苦かった。匂いもきつく、直ぐにそれと分かってしまう粗末なものであった。精製する技術が無かったのである。魔術師であれば毒薬の類いの知識は当然あり、飲む前に気付かれてしまうのは目に見えていた。
一方、眠り薬は数種匂いがなく、味も酒に混ぜれば消せる様なものが存在していた。これは少量であれば魔術師でも見極めることは難しかった様で、それも白い粉となれば一つしか考えられなかった。
「ダシルタの樹液だな。ったく…俺にあんなちゃちな眠り薬は効かねぇが、お前らはぐっすり眠りこけてたな。」
ルーファスはそう言いながらウイツへと視線を向けると、ウイツは顔を引き攣らせたのであった。
そもそも魔術師は薬学を専門的に学ぶ上、毒薬は身を守るために必須なのである。その魔術師が眠り薬を気付かずに盛られた上に眠りこけたとなれば、その能力を疑われても仕方無いといえる。
「反論はしないよ。私が油断していたのが悪いんだからね。」
「そりゃ、あんな愉快な爺さんじゃ油断もするわな。で、あの村長の爺さんは知ってたんか?」
そう言いつつルーファスが男へと視線を戻すと、その男だけでなく、周囲の男達が皆一様に泡をふいて青冷めていた。
「こりゃ…。」
ルーファスは急いで魔術を解いて男を見ると、どうやら毒がまわっているようであった。そのため、ルーファスは男達へと解毒の魔術を施そうとした時、何処からともなく声が響いてきた。
「今度は敵を助けるとはね。いやはや、随分とお人好しですねぇ。」
その声にルーファスらは体を強張らせた。それは…あのアーネストのものだったからである。
「ウイツ、暫く時間稼げるか?」
「任せろ。」
ルーファスとウイツは小声でそう申し合わせると、ウイツは直ぐに見えぬ敵に向かって叫んだ。
「隠れてないで姿を見せろ!」
だが、声
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