第一章
XV
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リッケの村外れから暫く進むと、山へと分岐している道があった。この道を行くと、さして時を経ぬ内に小さな村へと入る。名のあるような村ではなく、二十軒程の家が建ち並ぶ小規模な村であり、ルーファスらはここで休むことにしたのであった。
この村はファルケルとは無関係らしく、彼の肖像が飾られている訳でなく、その名を出しても分からぬ風であった。
「こん村は自給自足だで、滅多に他ん町や村にゃ出ねぇんだ。なんも知らんで済まんのぅ。」
ここはルーファスら五人を快く泊めてくれた村長の家で、女公爵がファルケルのことを村長へ問っていた。だが、村長は何も知らない様で、五人は心配は杞憂とばかりに行為に甘えることにした。
村長に食事と酒を用意して持て成された五人は、その後に気分良く床に着いた。
しかし、誰一人として気付きはしなかった。この小さな村で、何故五人をも持て成せる料理と酒とが用意出来ていたかを。それは村長が出した酒のせいだったのであるが。
明け方、とは言え五人が床に着いてからさして経ってはいないが、ルーファスは何かの物音で目を覚ますこととなった。
「ったく…またかよ…。」
目を覚ましたルーファスは、ファルの街での出来事を思い出していた。
あの時に聞いた物音は、セブスの村人が逃げてきたものであったが、無論、今回のこれは違う。声がするでもなく、ただ足音だけがしているのである。一人二人ではなく十人以上のもので、それも出来る限り音を消すような歩き方であった。
「…何してんだ?」
ルーファスはそう呟いてカーテンの隙間から覗いた時、不意に外から声が響いた。
「放て!」
その声を合図として家へと何かが投げつけられ、そこかしこから煙が上がった。それだけではなく、家の周囲に油がまかれているらしく、さして時を経ぬ内に炎に囲まれてしまったのであった。
「皆、起きろ!」
ルーファスはそう怒鳴ったが、皆は全く起きる気配はなかった。例の酒に薬が盛られていたのである。ルーファスは粗方の毒に耐性があって多少の毒は平気だが、他はそうもいかぬのは言うまでもあるまい。
「ったく面倒くせぇなぁ…。」
ルーファスは頭を掻きながらそうぼやくと、次に呪文を唱えた。
「大いなる水よ、汝の流れによりて穢れを浄めよ!」
それは解毒の魔術であった。それは水を主体としたもので、魔術が完成した時には四人に水の幕が掛かり、それは直ぐに弾けた。
「…!?なんじゃこれは!」
「冷たいです…。」
「ルー、こんな起こし方があるか!」
「…何で…水なんですか?」
四人はそう言いながら目を覚ましたは良いが、何故にこの様な事態になっているかを理解出来ないでいた。
「ヴィー。お前、あの酒飲んだんか?」
「…少しだけです…って、何で分かったんですか!?」
ヴィルベルトは顔を
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