第一章
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その代償は宝玉の消滅ですが…。」
ルーファスはそう答えるや、少しだけ顔を上げて父を見た。家宝を「消滅」させるために「貸せ」と言ったのだから、ルーファスは内心気が気ではなかったのである。
だが、そんなルーファスの思いを知ってか知らずか、シュテンダー侯爵はこうルーファスに返したのであった。
「それはどうでも良い。これであのミストデモンを滅ぼせるのならば安いものだ。」
そう言って後、ルーファスの前に歩み寄り、手にしていた小箱をルーファスへと手渡して言った。
「アダルベルト、しくじるな。お前の事だから巧く遣り抜くだろうが、今までの様に一人で突っ走るな。今のお前には守るべき者がある。故に、この件は必ず成功させねばならん。」
「解っております。シュテンダー家の名に泥を塗る様な事は致しません。」
ルーファスの返答に、シュテンダー侯爵は浅い溜め息を吐いて言った。
「ずっと馬鹿ばかりやっていたが、お前はそれ以上のことも成したからな。良い、お前を信じよう。」
そう言うや、シュテンダー侯爵はルーファスらから離れて馬へと乗った。
「クリスティーナ、後は頼んだぞ。私は執務に戻らねばならんからな。」
「全く忙しない奴だな。少しはゆるりとして行けば良いだろうに。」
シュテンダー侯爵の行動に女公爵は苦笑しつつ言ったが、彼はそれを聞かなかったことにして馬の向きを変えて言った。
「アダルベルト…たまには家へ戻ってこい。マリアーナが心配しておったからな。」
そう言い終えるや、直ぐ様従者に「行くぞ。」と声を掛けて走り去ってしまったのであった。
シュテンダー侯爵が去って後、未だ冷や汗をかいていた師へ恐々と問い掛けた。
「師匠…大丈夫ですか…?」
「あぁ…平気だ。全く…父上まで来るなんてな…。」
ルーファスは冷や汗を拭いながらそう言うと、女公爵は苦笑しつつ言った。
「済まぬ。あやつに事情を話したら、自ら持って行くと言い出して聞かんでな。」
女公爵がそう言うと、今まで黙していた大神官が付け足す様に口を開いた。
「全くのぅ。血が繋がっておらんでも、やはり子は子じゃ。あやつ表面には出さんかったが、内心気が気ではなかったからのぅ。」
「ファル、それは言うてはならん。」
「お、こりゃ失敬したのぅ。じゃが、遅かれ早かれ知れることじゃ。」
「それはそうだが…。」
二人の会話は、単にルーファスの父が息子を案じていた…と言うこと以上のことであると感じたルーファスは、意を決して女公爵へと問うことにした。
「叔母上、私は父と血が繋がってないことは知ってます。ですが、それだけではないのですよね?」
その問いに、女公爵は「うん…。」と唸り、どう答えるべきかを考えた。
ルーファスは自分の出自を性格に把握しているわけではなかった。見れば家族の誰とも似
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