第一章
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。あれ…親父殿だろ…。」
「え?もしかして…シュテンダー侯爵様が…?」
ヴィルベルトは未だシュテンダー侯爵には会ったことはなかった。ルーファスが実家に帰ることが無かったためだが…。無論、顔は知らないのである。
そうしているうち、三人の目には馬に乗った四人の人物姿がはっきりと分かった。一人は言うまでもなく女公爵であるが、その少し後ろについている男性をヴィルベルト知らなかった。その後ろに並んでついている二人の従者には見覚えがあったため、その男性がルーファスの父であるシュテンダー侯爵だと分かったのであった。
その男性は精悍な顔立ちで、深い碧の外套を纏っていた。
「いや、待たせたな。」
そう言いつつ、女公爵は三人の前へとやってきた。そして、その後ろにいた男性にも声を掛けた。
「早ぅ来い!全く、何をモタモタしておるのだ!」
「そう怒鳴るな!わしも歳なのだ!」
その男性はそう怒鳴り返し、直ぐに女公爵の隣に馬をつけた。すると、女公爵は軽い笑みを浮かべて言った。
「何を言っておる。私は未々走れるぞ?」
「お前は相変わらずだな。わしはとうにそういうことから引退しておるのだ。少しは考えてほしいものだ。」
男性がそう言いながらルーファスら三人の前に来た時、三人は同時に片膝をついて礼をとった。そして些か緊張気味にルーファスが口を開いた。
「お久しゅう御座います、父上様。」
「アダルベルト…また厄介事に巻き込まれた様だな。」
アダルベルトとは、ルーファスのミドルネームである。
父であるシュテンダー侯爵は、決してルーファスをファーストネームでは呼ばなかったが、これには些かの理由があった。それはファーストネームを付けた人物を知っていたからである。
シュテンダー侯爵は、内外からルーファスに大して態度が冷やかであると言われていることは承知していたし、その態度にルーファス自身は父に嫌われているのだと家を出た程なのである。
しかし、それはルーファスの秘密によるもので、ミドルネームしか使わないのは名付けた者への敬意なのである。ここで詳しく語ることは敢えて避けるが、後に明らかになるだろう。
「申し訳御座いません。」
父の言葉に、ルーファスは固い口調で答えた。シュテンダー侯爵は少しだけ寂しげな表情を見せたが、直ぐに表情を戻して言った。
「別に良い。今に始まったことではないからな。で、これが必要と聞いたが?」
シュテンダー侯爵はそう言うや、懐から小箱を取り出して開いた。それは紛れもない、シュテンダー家の家宝“ラファエルの涙"であった。
「これがあれば、確実にあのミストデモンを滅せると聞いた。本当か?」
「はい。先に叔母上より話しをお聞きと存じますが、その“ラファエルの涙"であれば、確実にミストデモンを打ち滅ぼすことが出来ます。但し…
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