第一章
XI
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ダー侯爵家には一度も戻ってはいないどころか、その領地にすら足を踏み入れてはいないのである。そんな放蕩息子がいきなり帰り、父である侯爵に「宝玉下さい。」とは流石に言えまい。
「ルーファス、私が言っやろうか?」
ルーファスの狼狽ぶりに苦笑しつつ、女公爵がそう切り出した。
女公爵のクリスティーナは無論、シュテンダー侯爵を良く知っている。遠縁とは言え、二人は幼い時分からの知り合いであり、事ある毎に力を競い合っていた謂わば好敵手とも言える仲であった。
「叔母上…それは…」
「たまに奴の顔を見に行くのも悪くはない。それに、これは私の従者であったクレメルの敵討ちでもあるのだ。故に、お前達は私が戻るまで静観しておれ。」
そう言うが早いか、直ぐに馬に乗り、少し離れた所で待機していた残る二人の従者を引き連れてその場を離れてしまったのであった。
「全く…返事くらい聞いてから行けってんだよ…。」
ルーファスのぼやきを、横でヴィルベルトとウイツは苦笑しつつ受け流したのであった。
三人は女公爵が戻るまで、リッケの村を通り過ぎた平地で待つことにした。そこには中程の林があり、中には泉もあったので都合が良かったのである。平地故に、一歩林を出れば見通しは良く、隠れるにも人を待つにもうってつけの場所だったのであった。
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