第一章
XI
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であった。女性魔術師と神聖術者に取り憑いた記録はない。
そもそも、神聖術者に取り憑くことが出来るならば、最初からエネス自身に取り憑いていた筈である。魔術師に取り憑くのは、妖魔が魔術によって造られているからに他ならない。神の力を受ける神聖術者に憑けないのも当たり前と言える。女性魔術師に憑かなかった理由…それは後に分かるであろう。
「で、妖魔は誰かを犠牲にしねぇと封じらんねぇってのか?いや、封ずるってより倒せねぇのかよ。」
ルーファスは地に座って腕を組みながら大神官へと問った。その問いはルーファスだけでなく、その場にいた全員の問いでもあり、皆の視線は女公爵の腕輪へと集まった。
「うむ…倒せぬ訳ではないのじゃが、それでもやはり器が必要なんじや。あの妖魔には実体が無いため、直接・間接を問わず攻撃は効かん。」
「その器ってのは、人じゃなきゃ駄目なのか?」
ルーファスは再度、大神官へと疑問をぶつけた。すると、大神官は暫し考えてそれに答えた。
「…そうじゃのぅ…今までは人間にしか憑いとらんかったから何とも言えん。いや…もしかしたら…。」
大神官は何やら考え込んでいる様子で、暫くの間何も言わず黙っていた。
少しして、大神官は些か躊躇う様な口調で言った。
「少し言いづらいのじゃが…。」
「言ってくれ。他にも方法はあるのか?」
ルーファスは大神官にそう返し、そして答えを待った。そんなルーファスに、大神官はこう答えたのであった。周囲の皆も、その答えに耳を傾けている。
「ラファエルの涙でもあれば…。」
その答えに、ルーファスはその表情を一変させたのであった。そして、ルーファスは恐る恐る大神官へと言った。
「それってさ…破壊するってこと込みで…か?」
「無論じゃ。ラファエルの涙は魔力の結晶の様なもんじゃが、その中に神聖さも宿しておる。十二聖人の宝玉が全て揃っとれば別じゃが、あれは他の妖魔を封じておる故、全てを動かす訳にはいかん。そうなれば、ラファエルの涙しかなかろうて。」
大神官がそこまで言った時、ルーファスは慌てて言った。
「そりゃ無理だ!そんなんしたら親父に殺されちまうって!」
「師匠…ラファエルの涙って、一体何なんですか?」
ヴィルベルトがそう問った時、冷や汗をかいているルーファスに代わってウイツがそれに答えた。
「ラファエルの涙って言うのは、シュテンダー侯爵家に代々受け継がれている秘宝なんだ。王の周囲を守る七つの大貴族にはそれぞれ秘宝が受け継がれているけど、その中にあって最大の力を宿す宝玉なんだよ。」
「あのぅ…それって、それに妖魔を封じて宝玉ごと…。」
「そうなるね。」
ウイツの言葉に、ヴィルベルトも冷や汗をかいた。
そもそも、その様なことをルーファスが出来よう筈がない。彼はここ数年、実家であるシュテン
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