第一章
XI
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であったが、そこにいつしか魔術が加わり、妖魔を造り出して戦に使う様になっていった。
最初、造り出した妖魔には大した力は無かった。死なない兵士程度の考えで使っていたのである。しかし、そうして実験を兼ねて妖魔を造り出しているうち、強大な力を持つ妖魔が誕生した。中でも、五つの妖魔が有名で、シェオールと名付けられた死者を操る妖魔が最も強いとされている。
その中にあって、一体だけ実体を持たない妖魔があった。最初、その実験は媒体が朽ちたために失敗に終わったと考えられた。だが、それは見せかけだけで、実は魔術師の一人に取り憑いていたのである。
その妖魔は憑いた魔術師の精神を少しずつ蝕み、数日の後には魔術師の仲間を攻撃し始めた。この時点で初めて、妖魔が実体の無い取り憑いて力を発動させる類いのものだったことが分かったのであった。
最初、魔術師達は自分達の手で対処すべく動いたが、妖魔の動きを封ずるだけで手一杯であり、それ以上のことは出来なかった。多くの魔術師が手を尽くしたが全て失敗に終わり、そこで神聖術者を呼び寄せた。その神聖術者がエネスだったのである。
しかし、なぜエネスが呼ばれたか…その理由は、実験に携わっていた魔術師の一人と恋仲だったからである。恋人に危機が迫っているとあらば断れぬと判断されたのである。
エネスは召喚を受け入れ、妖魔を引き剥がしたは良かったが、これがエネスを悲劇へと導く結果となったのであった。その妖魔はあろうことか、近くにいた魔術師にではなく、遠く離れていたエネスの恋人に取り憑いて脱走したのである。
妖魔にはエネスがいかに恋人を愛し、大切に想っていたかが分かっていた。故に、わざと標的にしたのである。
エネスは恋人に憑いた妖魔を追い、リヒテンナハテの森の奥へと追い詰めた。そこで何があったかは分からないが、魔術師達が追い掛けて森へと入った時、エネスの姿はなく、石となったエネスの恋人が見付かっただけだったという。その胸にはエネスの使っていた杖が深々と突き刺さっており、それ以降、その場所は幾重にも封印されたという。
その後、エネスを見掛けた者は一人もおらず、死んだとさえ思われていたのであった。当時のエネスは二十四歳であり、愛しき者を手にかけた自分を許せなかったとも言われており、森の中に恋人を想って暮らしているのではとの噂もあったが、あの妖魔の口振りからして、噂が真実だったようである。
エネスが生きていれば、まず封が破られることはない。少なくとも、エネスは数年前迄は生きていたと考えられるが、一体誰が妖魔の封印を破ったのか?アーネストに取り憑いているのだから、彼が何らかの形で関与していることは明らかであろう。
さて、この妖魔は実体が無いことから<ミストデモン>と呼ばれている。だが、実際に取り憑いた記録があるのは、男性魔術師だけ
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