第一章
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ファスにそう言われ、女公爵はどう説明したものかと迷った。だが、それには大神官本人が質問で返してきた。
「この腕輪に嵌め込まれて宝玉、何じゃと思う?」
「はぁ?」
大神官に逆に問われ、ルーファスは女公爵に歩み寄り、その腕輪をまじまじと見た。どこかで見た様な気はするのだが、それが中々思い出せない。ウイツもヴィルベルトも、ルーファスに続いてそれを見たが、それに答えたのはヴィルベルトであった。
「聖ニコライのサファイアじゃないですか!何故こんなところにあるんですか!?」
ヴィルベルトが叫ぶ様にそう言うと、ルーファスもウイツも一気に顔色を変えてしまったのであった。
聖ニコライのサファイアとは、聖人十二人の名を冠した宝玉の一つである。今は全て王城の地下に安置されている筈の代物であった。
「えっと…叔母上…?」
ルーファスは顔を強張らせながら女公爵を見た。それに女公爵は眉をピクリとさせて答えた。
「これは王に許可を得てから貸出してもらっているものだ。変な勘繰りをするでないわ!」
女公爵はそう言って顔を歪めた。
大神官はそれが面白いらしく笑っていたが、前の三人は全く笑えない。何故なら、その聖ニコライのサファイアは、かの魔術師クラウスが妖魔撃退に使用したもので、その強大な力は未だ衰えてはいない。下手に使えばとんでもない事態になり、もしあのファルケルの手にでも渡ろうものなら惨事になりかねない。
「お前さん方の心配も解らんではないが、こいつがわしの依り代じゃ。わしがこの中に居る間は、好き勝手に力は使えんよ。」
ルーファスらの心配を他所に大神官は笑うが、前の三人は半信半疑である。特に、ルーファスとヴィルベルトは大神官が記憶の断片であることを知っており、その状態で至宝の聖ニコライのサファイアを制御出来るかが最大の心配なのであった。
確かに、あのファルケルであればこの宝玉を持つことは出来るだろう。神聖術者であれば邪気を発することはないからである。
聖ニコライのサファイアを含む十二の宝玉は、そのどれもが邪気を払う。逆に、それを扱える魔術師には邪気がないとも言え、魔術が純粋な力とされるのはその事実があるからでもある。力とは区別なく強大で恐ろしいものでもあり、故に人々は畏れ、敬うのである。
ファルケルの狙いがそれであることは分かっているが、それは彼の計画の一端でしかない。それ故に、計画を阻止すべく一刻も早くファルケルのところへと向かわねばならないのである。
「ま、どうにかなるか。」
ルーファスはそう言うと、一人馬車へと向かった。
馬車は襲撃前に移動させていたため、あの人形の襲撃より免れていた。無論、馬も無事であり、ルーファスはそんな二頭の馬を撫でてから馭者台に飛び乗った。
「行くぞ!」
その声に、ウイツとヴィルベルトはやはり
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