第一章
\
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
老婆の話から、ルーファスはファルケルがグリュネに潜伏していると確信していた。
しかし、グリュネに行くには、あの焼き払われたセブスの村へ入らねばならず、三人は陽も昇らぬうちにそこへ入ることになった。
月明かりで三人はそれを見たが、それは目も当てられぬ惨状であった。
「こりゃ…まるで戦の跡だな…。」
馭者台から降りたルーファスは辺りを見回し、顔を顰めて呟いた。
家々は全て焼け落ち、そこかしこには焼け焦げた動物や人間の亡骸が転がり、かつてここが村であったことさえ嘘である様な有り様であった。
「このままじゃ亡骸が獣や鳥の餌になっちまう。ウイツ、手伝ってくれ。」
ルーファスがウイツへとそう言うと、ウイツは馭者台から返した。
「まさか…あれをやる気か?」
ウイツにはルーファスが何をやろうとしているのか分かった様で、彼はわざとらしく眉を潜めていた。
「そうだ。そう嫌そうな顔すんなっての!こいつらは犠牲者なんだぜ?せめて眠れる場所くれぇやってもいいじゃねぇか。」
「分かったよ。俺は穴を掘るから、掘れしだい声を掛ける…。」
ウイツはそう言って馭者台から降りると、少し離れた場所へと移動したのであった。
二人の会話を聞いていたヴィルベルトは、ウイツが馭者台から降りた直ぐ後に馬車から降りてルーファスの元へと走り寄って言った。
「師匠…一体何を?」
「ヴィー、これからやるのは“死者の行進"だ。戦時中に生まれた新しい魔術で、今は使うことは稀な魔術だ。良い機会だから、お前は良く見とけ。」
ルーファスはそう言うと、ヴィルベルトを馬車まで戻らせ、自らは村の中心へと向かった。
暫く待っていると、遠くからウイツの声がした。
「用意出来たぞ!」
その声を合図に、ルーファスは魔術を行使し始めた。だが、それは単なる詠唱ではなく、まるで美しく透き通る音楽の様であった。歌とも呪文ともとれないそれは、白みつつある空へ響き、大地を潤す様であった。
そうして後、ルーファスの詠唱が終わらぬうちに、その魔術は効力を発揮した。それを見たヴィルベルトは、この魔術が何故“死者の行進"と呼ばれているのかを理解したのであった。
今にも消えそうな月明かりと、白み始めた朝の淡い光の中、動かぬ筈の遺体が立ち上がり、ウイツの空けた穴へと歩き出したのである。
それはルーファスの詠唱とは対照的で、焼けた体を引き摺りつつ歩み行く遺体は、まるで地獄の亡者のように見えた。
それがどれ程続いたのか、最後の亡骸が穴へと身を投げた時、朝日が山間から顔を出して大地に光を注ぎ始めた。そして、ウイツは遺体が横たわる上に魔術で土を盛り、そこへ用意していた大きな岩を墓石代わりに乗せたのであった。謂わば共同墓地と言えよう。
「さて…行くか。」
全てを終えたことを確認すると、
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ