第一章
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れに対しても言葉を返した。
「だったら、それは血の対価だな。穢れた金は人を蝕む。ファルケル、お前は確かに選ばれたが、それは神にじゃねぇ。」
「では、何だと言うのだ?この神聖な力は神より賜ったものに他ならぬ。」
「違う。その力は単に血筋からきたもんだ。神から選ばれたと思い込んだお前は、その心を悪魔に魅いられたんだ。」
ルーファスは、そう言ってファルケルの精神の弱さを露呈させた。それが証拠に、ファルケルは見る間に顔を紅潮させて怒鳴った。
「黙りおれ!」
ファルケルのそれは、まるで悪戯を咎められている子供の様で、自分は正しく、咎めている者が間違っていると言った風であった。いや、自らが過ちを犯していることにまるで気付いてない分、ファルケルは手に終えなくなる可能性があった。彼の場合、自分だけが正しいのだ。
「ファルケル様、この様な所へ御出になられておりましたか。」
ルーファスが動こうとした時、何処からともなく不意に青年が現れた。そのため、ルーファスだけでなく、ウイツもヴィルベルトも身構えて様子を窺った。
「アーネストか。」
ファルケルは男をそう呼び、アーネストと呼ばれた男は恭しくファルケルの元に膝をついて言った。
「ファルケル様。僭越ながら、この様な下賤の輩と戯れに言葉を交わされるのは如何なものかと。貴方様の神聖さが損なわれることはありますまいが、万が一体調を崩されては一大事。さ、早くお戻り下さい。」
アーネストはペラペラと良く喋った。その内容は、前の三人を怒らせるには充分であったが、ウイツが何か言おうとした時、いきなりファルケルは聖文を唱えた。
「我が行くべき場所、我の在るべき処。過ぎ去りし時と来るべき時を繋ぎ、我を座へと導け!」
聖文が完成した刹那、ファルケルとアーネストはその姿を消し去ったのであった。残ったのは灰となった村跡と朝の光だけである。
「ったく…逃げやがったか。」
ルーファスはそう言って舌打ちした。その時、後ろにいたヴィルベルトがルーファスへと問い掛けた。
「師匠…あの聖文、移動の術ですよね?確か魔術にも同様の呪文がありましたが、かなりの高位魔術だった筈ですけど…。」
「まぁな。俺もウイツも使えるが、これがまた不便なもんなんだ。」
「不便…ですか?」
ヴィルベルトは首を傾げ、不思議そうに聞いた。一瞬で移動出来るのだから、逆に便利ではないかと考えたのである。
そのヴィルベルトの問いに気付いてか、ウイツが溜め息混じりに返した。
「移動魔術は印を刻んだ場所でないと移動出来ないんだ。これは神聖術も同様で、それもかなり魔力や神聖力を擁している土地でないと印を刻めない。どこでも自由に…って訳にはいかない術なんだよ。」
そう説明され、ヴィルベルトはガッカリした表情を見せた。
移動魔術はかなりの危険
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