第一章
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ルケの村へ入ることが出来た時には、もう日が傾きかけていた。
ルーファスとヴィルベルトは急いで食糧を調達し、それを馬車へと詰め込んだ。事情を話した店の店主が力を貸してくれ、他の店でも安く食糧を手に入れることが出来たは良いが、馬車の中も上の荷台も一杯になり、帰りはヴィルベルトも馭者台に乗ることになった。
馬車本体にルーファスは軽減の魔術を施し、馬には出来るだけ負担にならぬようにしたが、それでもファルの街に着く頃にはすっかり日も暮れてしまっていた。
「もうすぐ着きますね。僕、水で体を拭きたいです。」
「そりゃ俺もだっての。一応二日分の宿代払ってあんだし、また風呂にでも入りゃいいだろうが。」
忘れていたが、二人は宿に泊まっていた…筈なのである。前金として二日分渡してあるため、戻ればゆっくり出来るのである。
しかし、ファルへと戻ってみると、二人のそんな思いを打ち砕く出来事が起こっていたのであった。
「な…なんだこりゃ…。」
二人が街に入って直ぐ、道を塞ぐ様に人が溢れていたのである。どうやら暴動が起こっているようであった。
馬車では、この本通りしか通れない。引き返そうにも、後ろからも人が詰め掛けており、とても馬車を動かせる状況にはなくなっていた。
人々は食糧や薬、住居など、生活に欠かせないものを要求しながら街長の館へと行進しているようであったが、その様な中へ馬車で入ってしまったため、暴徒化した民衆に目を付けられない筈はない。
「師匠…ヤバくないですか…?」
「そうだな…こりゃ、ヤベェよな…。」
そう二人が呟いた時、周囲の民衆が一斉にルーファスらへと視線を向けた。正確には、そこにあった物資に…と言った方が良いが。
身の危険を察したルーファスは、仕方無く立ち上がって魔術を行使した。
「星々よ、憩の時を齎せ!」
その言葉を聞き、隣のヴィルベルトはギョッとしてしまった。何故ならその魔術は…睡眠の魔術なのだ。それをこの様な場所で行使すれば…。
「あぁ…。」
周囲の人々は次々に眠りに落ち、その場は眠る人々で埋め尽くされてしまうのであった…。無論、馬車は全く進むことは出来ない。
「これ、どうするんですか?人が眠っただけで、状況は全く変わんないじゃないですか…。」
「…ったく面倒くせえ!いっそのこと、こいつら纏めて吹き飛ばすってのはどうだ?」
ルーファスがそんな物騒な意見を述べた時、背後から不意に声を掛ける者がいた。
「相変わらずだな、ルー。」
さも可笑しいと言ったその声に、ルーファスはハッとして振り返り、直ぐ様馭者台から飛び降りた。
「ウイツ!」
そこに立っていたのは、ここの街長の所へ来ていた魔術師であった。ルーファスとは長い付き合いで、親友と呼べる者の一人である。
「ルー、久しぶりだな。そこから顔
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