第一章
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の傍らに居続けているのである。
尚も揶揄われているダヴィッドへ、厨房からマルティナが顔を出して大声で言った。
「ちょっと、まだなのかい!そんなんじゃ、結婚してやんないよ!」
「…え!?」
ダヴィッドは目を見開いてマルティナを見ると、彼女は満面の笑みを見せていた。
「それって…一緒になってくれるって…」
「そうだよ!だから早くやっちまいなって!」
そう言って恥ずかしそうにマルティナは厨房へ引っ込んでしまったが、店の中からも厨房からも拍手や祝福の声が飛び交った。
村を焼かれて逃げ延びた人々見て、マルティナにも思うところがあったのであろう。
「ま、こういうのもありか。」
「そうですね。」
ルーファスとヴィルベルトは食事をとりながら苦笑しつつそう言った時、隣に座っていた老婆が不意に話し掛けてきた。先程ダヴィッドに子供の話をした老婆である。
「お前さんは結婚せんのかい?」
「は?俺のことか?」
ルーファスは急に聞かれたため、もう少しでむせるところであった。
「そうじゃよ。見たところ旅のお方じゃろうが、一人もんじゃろ?」
「まぁ、そうだけどよ…。」
老婆の問いに、ルーファスは些か鬱陶しいと思った。そんな話をするために食事をしている訳ではないのである。だが、老婆はルーファスに尚も話し掛けた。
「早ぅ良ぇ嫁さん見つけんさい。そうせんと、皆持ってかれちまうでのぅ。」
老婆はそう言って笑っているが、ルーファスは苦笑いしつつ渋々返した。
「こいつが一人前になったら考えるさ。」
「ほぅ、弟さんかいの?」
老婆はそう言ってヴィルベルトを見た。ヴィルベルトもまた苦笑している。
「いや、こいつは弟子だ。これでも魔術師なんでな。」
ルーファスがそう言うと、老婆は少し驚いた表情を見せた。ルーファスにはそれが何なのか分かりかねて暫く様子を見ていると、この老婆は二人が驚くようなことを何とはなしに言ったのであった。
「魔術師とな…。私の兄は神聖術師でのぅ。半年ほど前に逝ってしもうたが、お前さんの様に弟子はとらんかったでのぅ。甥には幾分目を掛けてくれとったが、その甥がまさかあんな放蕩もんになっちまうとはのぅ…。」
まるで何かを思い出す様に老婆は言ったが、それは単なる独り言ではなかった。その話に合致する人物は、そう多くはないからである。
その老婆へ、ヴィルベルトが躊躇いながらも問い掛けた。
「貴女は…もしかして大神官老ファルケル殿の妹様ですか?」
「様など付けなさんな。しかし、さすがに兄は名が知れておるのぅ。」
老婆はそう言って笑っていたが、ルーファスとヴィルベルトは顔を見合せた。まさか、大神官の妹が隣に座っていようとは、一体誰が考えよう。
二人はその後、老婆から様々な情報を聞き出すことが出来た。
老婆から聞
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