第一章
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くらい覚えとけよ…。」
ウイツは溜め息を吐きつつそう言ったが、後ろで控えていたヴィルベルトは驚いたように言った。
「えっ!?師匠って…魔導師の称号を持っていたんですか!?これで?」
「ヴィー…これでは余計だ。ま、称号は十五ん時に授与されてっけど、あんなもん何の役にも立たねぇかんなぁ。」
「何てこと言うんですか!魔導師の称号は、単に力が強いだけじゃ与えられないものなんですよ?」
ヴィルベルトは顔を紅潮させ、ルーファスの言葉に反論した。まぁ、ヴィルベルトが反論するのも無理からぬことなのである。
魔導師の称号とは、魔術師の玄人であるだけでは与えられない。無論、魔術の力は重要であるが、他に精神力、学力、剣術など、様々な視点から術者を観察し、それら全てが一流でなくばならない。
その中で学力がかなりの難関と言え、特に魔術構成論と神聖術読解の二本柱が難解なのである。魔術構成論は魔術師には必須だが、なぜ神聖術読解を学ぶかが鍵なのである。
神聖術は魔術とは全く違う性質を持つが、二つの術が互いにいがみ合うのは得策ではなく、寧ろ歩み寄れば何倍もの力となる。そうなれば大陸を平安に保つことが出来ると考えた数代前の王達が、魔術師には神聖術読解を、神聖術者には魔術構成論を学ばせることに賛成したのである。因みに、神聖術者には<大賢者>の称号があり、大陸に二人のみ存在している。
ともあれ、ヴィルベルトにとって魔導師の称号は憧れであり、目指すべき目標なのである。それをルーファスは役に立たないと言ったのだから、ヴィルベルトにとっては憧れを否定されているのと同じなのであった。
「まぁ、そう怒んなって。単に強いだけじゃ、世の中渡ってけねぇぞ?強いってのはな、それだけで弱者を助ける義務がある。要はな、自ら得たものを世に還元しなきゃなんねぇってことだ。」
「でも…強いに越したことないじゃないですか…。」
不服気にヴィルベルトが師に言うと、聞いていたウイツがそれに答えた。
「ヴィルベルト君。強くなりたいのは分からなくはないが、強くなれば多くの義務が生じる。それに対し、責任感を伴わせなくてはならない。単に力だけ得ても、それは自分だけ強いだけであり、実はとても弱く脆いものなんだよ。得た力を自分の意識で制御し、人々から慕われることが出来てこそ、本当に強いと言えるんだ。力は振るうためにあるんじゃなく、守るためにあるんだからね。」
「そう言うものですか…。」
「そう言うものだよ。」
ウイツはずっと笑っている。どうやら、ルーファスとヴィルベルトの二人が面白くて仕方無いらしい。
さて、人々が押し寄せていたのは街の中心の大通りだけだったようで、他はいつも通りであった。ただ、セブスの人々が押し掛けてきているため、人々は幾分忙しなく動き回ってはいたが。
人々がウイツの魔
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