第一章
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であるかが徐々に分かってきた。とは言っても、二人はファルケルを神聖化しているので、そこは話半分として聞かねばならなかったが。
二人の話によれば、ファルケルは神聖術を完璧に操ることが出来、その業で人々の信仰を集めているという。だが一方で、その人々に自分へと寄進をするよう促しているという。寄進された金銭は救済のために使われると言っているらしいが、ルーファスらはそれらしい行いを全く知らないし、噂にすら聞いたことはない。
元来、神聖術者も魔術師も同様に、その力を私腹のために使う者は少ない。身一つでどうとでも出来るため、あまり多くを求めることはなく、あの大神官老ファルケルのように慎ましやかに暮らすのが一般的なのである。魔術師が貴族階級とはいえ、その生活内容がさして豪奢なものではないのもそれが理由である。まぁ、外面を保つためにそれなりではあるが。
尤も、力を行使して金品を得ることは、国の許可が無くば行えない。
魔術師は貴族階級であるため元から許可を得ているが、それでも試験を行って合格せねば行使することは許されず、違反すれば更迭され、数年は監視をつけられる。
それは神聖術者も同様。神聖術者の場合はマグヌス大聖堂の許可が必要で、ファルケルは国と宗教の律法を破っているのである。
それに加え、ルーファスはダヴィッドから聞いた話も思い出していた。
もし、この金が国を脅かすことに費やされでもすれば、このリュヴェシュタン王国だけでなく、大陸全土が再び混沌とした時代へと逆戻りしかねないのである。
「大神官殿は、これを危惧していたのか…。」
エッケホルトらの話を聞き終え、ルーファスは溜め息混じりにそう呟いた。ヴィルベルトはその呟きを理解出来たが、エッケホルトとルッツにはさっぱりの様で、そんな二人にルーファスはきっぱりと言った。
「お前らさ、騙されてっぞ?」
ルーファスの言葉に、エッケホルトとルッツはポカンとしてしまったが、少しして顔を紅潮させながら怒鳴り散らした。
「無礼ではないか!何も知らぬのに、よりによってファルケル様を侮辱するようなことを!」
「全くだ!あのお方は我らには及びもつかぬ偉大なるお考えをお持ちなのだ!」
余りの煩さに、ルーファスは「黙れ!」と怒鳴り返すと、二人は驚いて黙した。いくら考えが違うとは言え、目の前にいるのは大陸第二位の魔術師であり、到底勝ち目のない人物なのである。恐ろしくない…とはとても言えなかったのであった。
「そんじゃ聞くけどよ。そんな偉大なお方が、何でお前らなんぞに資金集めてこいって命じたんだ?」
「そ…それは…。」
ルーファスの問いに、エッケホルトもルッツも口籠ってしまった。
この大陸では、優れた思想家に貴族が支援するのは当たり前であった。にも関わらず、その貴族の支援もなく、庶民に寄進を促し、
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