第一章
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ルーファスらが街を出た時には、既に昼近くになっていた。ルケには半日程の道程とは言うものの、そう悠長に行く訳にはいかない。
「馬達にゃ悪いが、もう少し跳ばしてもらわねぇと…。」
ルーファスはそう言うや、二頭の馬に鞭を入れた。馬は主の考えが分かったらしく、その速度を速めてルケの村へと急いだ。
馬車の中では、ヴィルベルトが揺れを我慢して何やら呪文を唱えていた。
「…ここより離れ、我が道を直くせよ!」
かなり長い呪文を唱えていたようで、ヴィルベルトは揺れと詠唱で草臥れていた。ルーファスであれば一言二言で済むのだが、ヴィルベルトでは未々無理である。
ヴィルベルトが詠唱を終えた途端、馬車の中の揺れは止まった。余りに長い呪文なため一般的ではないが、彼が唱えた呪文は空間制御の魔術なのである。
この魔術は、元は妖魔を空間へ閉じ込めて倒すために編み出されたものであったが、それを小規模な魔術へと変化させたものである。
だが、先に述べた通り、この魔術は呪文が長い。そのため大半の魔術師は使用することは稀で、ヴィルベルトの様に馬車に慣れない者が時折使用する程度が現状と言えよう。
「ヴィー、またそれ使ったんかよ。」
「だって師匠…こうも揺れるとこっちは大変なんですよ!」
「全く、ヴィーはお子様だな。」
「お子様でも何でも構いません。僕はこの方が楽なんです!」
ヴィルベルトは不貞腐れたように言うが、ルーファスはそんなヴィルベルトが面白くて笑っていたのであった。
暫くは何事もなく、馬車は閑な風景の中を走っていたが、途中から山の中へと入った。ルケの村は山間にあるため、この山道を抜ければ直ぐである。この山さえなければ半日とかかならいであろうが、山を退かす訳にもいかず、馬車を通すために曲がりくねった道を作ったのであった。
だが、その山道を半ばまできた時、山の一部がいきなり崩れ、ルーファスはその手前で何とか馬車を止めて難を逃れた。しかし、どうもそれは自然なものではないと気付き、ルーファスは苛立って馭者台の上から叫んだ。
「誰だ!姿を見せろ!」
そしてルーファスは馭者台を飛び降り、剣に手をかけて辺りを見回した。
急に停められた馬車の中でも、空間制御の魔術によってヴィルベルトは何事も無かったが、ルーファスの声にヴィルベルトは慌てて外へと出て言った。
「師匠、何があったんですか!?」
だが、そうヴィルベルトが言い切る前に馬車の周囲を十数人の男共が囲み、それに驚いたヴィルベルトは直ぐにルーファスの後ろへと回った。
「お前ら、一体何者だ?」
ルーファスはヴィルベルトを背後に庇いつつ、睨みを聞かせて問った。ルーファスが見た所、その中には二人の魔術師がいた。とは言うものの、さして高位の魔術師ではなく、周囲の男共も山賊紛いの手下といったとこ
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