第一章
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その後、ルーファスはマルティナとダヴィッドから二人の関係などを聞いた。聞いてみれば、二人は幼馴染みだという。
話によれば、マルティナは元は商家の娘であったが、十年ほど前に王都の商人に流通ルートを奪われ、商売が成り立たなくなったという。マルティナの両親は死に物狂いで新ルートの開拓に走り回ったが、それさえも王都の商人に横取りされてしまった。
その中で、疲れから母は病に倒れて帰らぬ人となり、それを追うかのように父と兄も事故死した。残されたマルティナと妹は親戚筋を転々と回され、ある親戚の家で妹は売られてしまったのであった。叔父にあたる人物が金欲しさに貴族に売ったのである。無論、この国で人身売買は禁止されていたが、それでも時折こうしたことはあった。そして最悪なことに、その貴族はマルティナの妹をいたぶり尽くした挙げ句、その命を奪って道端へと捨てたのだ。
「そんな…貴族でそんなことしたら死罪じゃないですか!」
ヴィルベルトは怒りで顔を真っ赤にしたが、ルーファスはそれを制した。
「その話、確か聞いたことがある。王命で取り潰されたシュクリール家がそうじゃないか?」
ルーファスがそう問うと、マルティナは自嘲気味に笑うだけだった。そして話を続けた彼女は、もうそのことに触れることはなかった。
一人になったマルティナは親戚の家を逃げる様に出て、以前住んでいた家へと戻った。そこは空き家となって久しく、かなり傷んでいた。そこでマルティナは近くの造船所で働き、家を少しずつ修復していったのだ。それをダヴィッドが偶然見つけ、それ以来、ダヴィッドも手伝う様になった。
修復もかなり進みそれなりになったとき、マルティナはある決断をした。
- ここを娼館にする。 -
勿論、ダヴィッドは反対したが、マルティナそれを押し切って娼館を始めたのだ。
ダヴィッドはマルティナを愛していた。故に娼館などやってほしくはなかった。愛した女が他の男に抱かれるなど、ダヴィッドは認められなかった。
だが、ダヴィッドにはそれを止める術がなかった。一応貴族とは言えど、放浪生活同然であるダヴィッドに財産があるでもなく、飛び抜けて秀でた才能もなかったからだ。
生きるには金がいる。ダヴィッドとてそれは痛感していた。それ故、彼はマルティナの傍らにいることを決めたのだ。痛みを分け合うために…。そして、いつか二人で生きられるよう、マルティナを影から支え続けていたのであった。
「はぁ…だからあんなことしたんか…。」
深い溜め息を洩らし、ルーファスはそう言った。ヴィルベルトも呆れ顔でダヴィッドを見ている。
要は、幸せそうにしている人を見るのが腹立たしかった…と言うことで、それで嫌がらせをしていたのである。何とも幼稚だと、ルーファスとヴィルベルトは呆れ果てた。
「まぁ、分から
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