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魔術師ルー&ヴィー
第一章
Y
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だが、そんなマルティナにルーファスはニッと笑って言った。
「そんじゃ、こいつがあれば?」
 そう言ってルーファスが取り出したのは、小さな革袋だった。ルーファスの掌に収まる程のそれをマルティナへと手渡すと、マルティナは怪訝な顔をしながらその中のものを出してみた。
「あんた、これどうしたんだい!?」
 革袋に入っていたものは、どれも上質の宝石だった。少なく見積もっても、それは五百ゴルテにはなる代物で、マルティナはあまりのことに呆気に取られていた。
「それか?前の仕事の報酬で貰ったんだ。本当は要らねぇって突っ返したんだが、荷物に入れられてたらしくてな。使い途も無ぇし、お前らだったら有効に使ってくれそうだったからな。」
 ルーファスは事実をそのまま言ったのであるが、マルティナは訝しく思い、ルーファスと宝石とを交互に見ていた。
 稀に貴族や資産家などが寄付してくれることはある。だが、それでも精々五十ゴルテが上限である。マルティナが手にしているのはその十倍。訝しく思うのも無理はない。隣のダヴィッドはマジマジと宝石を眺めていたため、マルティナは宝石を革袋へと戻してルーファスへと言った。
「私は施しなんて受けないと言った筈だが?」
「それは施しじゃ無ぇよ。この町のためにってことだ。ここへギルドが出来りゃ、この町は活性化する。そうすりゃ、貧しさから抜け出せる奴らも多い。金持ちにはなれなくとも、相応の幸福を受けられはするんじゃねぇか?」
 ルーファスはマルティナの言葉にそう返し、そして再びニッと笑って見せたのだった。
 そんなルーファスに、マルティナは少し戸惑った。ここで「はい、そうですか。」とは、如何なマルティナでも容易く答えられない。いくら普通に接してほしいと言ったとはいえ、やはりルーファスは貴族なのだ。
 マルティナは迷ってダヴィッドを見ると、ダヴィッドは真剣な眼差しでマルティナを見ていた。ダヴィッドはどうしたいかを決めていたのである。その為、マルティナは意を決してルーファスに言った。
「貰っとくよ。いつかは分からないが、私はダヴィッドと二人、ここへ立派なギルドを作ってみせる。」
 マルティナはそう言い、ルーファスと同じようにニッと笑って見せた。それは決意の表れで、それを見たルーファスもヴィルベルトも微笑んだ。マルティナの隣に座るダヴィッドは、そんなマルティナを眩しそうに見詰めていたのであった。
 さてその夜、四人は旅の話を肴に飲み交わした。まるで昔からの知り合いと言わんばかりで、夜更けまで様々な話に華を咲かせた。無論、ヴィルベルトはお茶であるが。
 四人が眠りに着いたのは朝方に近く、マルティナとダヴィッドが店仕舞いを終わらせた後である。
 ルーファスは床に入って良い気分で眠っていると、外からガヤガヤと多くの人の声が聞こえて目を覚ました。
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