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魔術師ルー&ヴィー
第一章
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 さて、女はヴィルベルトを連れて店に入ると、そこは紛れもなく立派な娼館であった。
「あらぁ、姉さん。そんな若い子連れて、これからお楽しみ?」
「馬鹿をお言いでないよ。この坊っちゃんはそっちの客じゃないんだよ。私は奥の部屋入るから、何かあったら呼んどくれ。」
「はいよ。後で飲みもんでも持ってかせるわね。」
「そうしとくれ。」
 女は店にいた娘とそう話すと、ヴィルベルトを連れて奥へと歩いた。
 奥へ行く最中、ヴィルベルトは何とはなしに店内を見回した。そこそこの広さがあり、二階にも幾つかの部屋があるようである。その中に何人もの女性が居り、歳は十代から三十代位だろうと考えられたが、ヴィルベルトはそれ以上考えることを断念した。
 少し歩くと、店内にあった階段とは違う狭い階段があり、どうやら働いている者達専用の通路のようであった。そこには幾つか蝋燭が灯され、歩くにはさして不都合はない。
 その階段を上がると直ぐ、廊下の一番手前の部屋へと二人は入った。その部屋は店内とは違い華美な装飾などはなく、至って質素な部屋であった。
「ここは…雰囲気が違いますね。」
「この部屋かい?この部屋ね、昔、ここが娼館じゃなかった頃の名残なんだよ。娼館たって仕事の一つで、それだけであいつら全員食わしてやれないからねぇ。商談やったりする部屋も必要だってんで、こうして残してあるってわけさ。」
「へぇ…そうなんですか。そうですよね。店は店ですから、そこで必要なものは他から調達しなくちゃならないですしね。」
「そう言うことだよ。そう言ゃ名乗ってなかったね。私はマルティナだ。一応この店のオーナーだよ。」
 マルティナがそう言って自己紹介すると、ヴィルベルトは目を丸くしていった。
「オーナーだったんですか!?でも…なんで娼館なんて遣ろうと?他にも仕事はあるでしょうに。」
 そう言われたマルティナは、苦笑いしながらヴィルベルトへと返した。
「そりゃあんた、儲かるからさ。」
 何とも単純明快な答えであったが、ヴィルベルトはそこに裏があると直ぐに分かった。
 マルティナはどう見ても二十代半ばである。そんな女性が娼館を始め、自らも娼婦として働いているのだから、何か理由があるはずである。
 ヴィルベルトは躊躇しながらも、再度マルティナへと問うことにした。
「それだけじゃ…ないんですよね?」
 すると、マルティナは今度は淋しげな笑みを浮かべ、問い掛けるヴィルベルトの頭をまるで弟の様に撫でながら言った。
「若いのに良く気付く子だよ。でもね、そんなこと気にしなくていいんだ。」
 マルティナがそこまで言った時だった。突然部屋の扉が開かれ、そこから一人の男が入ってきた。
「何だい、ノックも無しに!」
 マルティナは男を知っている様で、立ち上がって男へと怒鳴りつけた。

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