第一章
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ルーファスがそう言ってニッと笑みを溢すと、そこにヴィルベルトが言葉を付け足した。
「師匠は貴族なんて柄じゃありませんよ。魔術の腕は一流でも、人として…」
「ヴィー。人として…何だ?」
「いえ…何でもありません…。」
ヴィルベルトは師の冷やかな視線を感じ、先を続けることを断念した。
しかし、そんな二人を見たマルティナとダヴィッドは、何だかホッとした表情になった。そしてマルティナが立ち上がり様に、ルーファスへと微笑みながら言った。
「分かったよ。それがあんたの領分ってことなんだね?」
「そう言うこった。別に畏まる必要なんざねぇんだ。」
ルーファスはそうマルティナに返したが、直ぐ様視線をダヴィッドへと向けて言った。
「でだ。ファルケルは今、何処に居るんだ?」
問われたダヴィッドは、今度は頭を下げて正直に答えた。
「今はフェライの村へ滞在していると聞いています。」
「奴は一体、何を遣ろうってんだ?」
ルーファスがそう問った時、ダヴィッドは少し間を置いた。どうやら、言って良いものかと考えている風であったが、彼は直ぐに口を開いた。
「国を…根底から変えると…。」
「根底から変える…だと?」
ルーファスはそれを聞くや、眉間に皺を寄せて腕を組んだ。
根底…とは、恐らくはこの貴族中心の社会のことを言っているのだと察しはつくが、それを覆すには革命以外に方法はない。
だが、今の状況で革命なぞ起こそうものなら、他の国の餌食になりかねない。
この時、各国は国を拡大するより、均衡を保って内側を安定させようと躍起になっていた。数十年経ったとはいえ、妖魔戦争によって大打撃を受けたこの大陸は、この時代にあってもその傷は癒えてはいなかった。
かの妖魔戦争終結後、七つの国は不可侵の条約を結んだ。そして国内を豊かにする方へと舵を取った訳であるが、ここで一つの国で革命なぞ起きれば何が起こるか知れたものではない。
要は、再び戦乱の時代へ逆戻りする可能性がある…というわけである。それだけは何としても避けなくてはならないのだ。
「ダヴィッド。それは…革命を起こすと言うことか?」
「私は具体的には分からないのですが、恐らくは…。勿論、ファルケル様が直に仰られたわけではないのですが、戦力を集めておられるので…そう考えてもよいかと…。」
そう答えたダヴィッドに、ルーファスは厳しい表情で問い掛けた。
「なぁ、ダヴィッド。革命ってのは、失敗したら関わった全ての者が大罪に問われる。それでも奴を信じるに足る理由は、一体何なんだ?」
力を集め、こうして民を信じ込ませるファルケル。一体何がそうさせているのか、ルーファスには未だ理解に苦しんでいた。
いかな神聖術とは言え、魔術と大差はない。過去には魔術師が宗教を起こそうとした例がないわけではな
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