第一章
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っるから…。」
「ファルケルだって!?」
ダヴィッドの言った名に、ルーファスとヴィルベルトは驚きの余り声を上げた。
その声にダヴィッドは一瞬気圧されたものの、何とか気を持ち直して二人に言った。
「様を付けろ!あの御方は偉大なる老ファルケル様のお身内。あの御方の言うことに間違いはないのだ。」
そう胸を張って言い切ったダヴィッドに、三人は胡散臭さこの上無いと言った風な表情を見せていた。
「おいおい…ファルケル坊は新興宗教でも起こしたのか?」
「師匠…坊って付ける歳じゃないと思うんですけど。」
「そうだね。もう中年のオッサンって感じみたいだしさ。」
三人はダヴィッドを余所に、適当なことを言っているため、ダヴィッドはそんな三人に向かって叫んだ。
「だから、様を付けろ!ファルケル様だ!あの御方はな、我ら貧しき者を困窮から救い出して下さるのだ!」
興奮気味に言うダヴィッドに、ルーファスは深い溜め息を吐いて返した。
「あのなぁ…ファルケルの奴は、そんなこと微塵も考えちゃねぇよ。」
「嘘だ!」
「嘘言ってどうすんだ?正直、お前がどうなろうが知ったこっちゃねぇがよ。実を言えば俺ら、大神官殿に頼まれて甥のファルケルを探して旅してきたんだよ。」
「は?大神官様が…お前達に?そんは筈はない!お前達の様な下の者に、なぜ大神官様が頼み事をするのだ!」
ダヴィッドは怒りの余り立ち上がったが、次のルーファスの言葉によってその怒りは霧散することになる。
「俺がバーネヴィッツの縁者だからじゃね?」
ルーファスがそう言うと、ダヴィッドだけでなく、マルティナも顔を蒼くしてしまった。
「…お前…いや、貴方は…あの女公爵様のお身内…。」
「まさか…バーネヴィッツ公様の…。」
ダヴィッドとマルティナは慌ててルーファスの側から退き、壁際で小さくなってしまったのであった。
「なぁ、そんな小さくなんなくても良いっての。俺は俺で、叔母様とは違う。今は爵位も無ぇし、お前らと一緒じゃねぇか。」
本心を言えば、ルーファスはバーネヴィッツや自身の家のことは口にしたくはない。だが、ここはそれを言った方が話が早いと考え、ルーファスは仕方無いとそれを口にしたのだった。
横で師の言葉を聞いていたヴィルベルトは多少驚いたにせよ、直ぐにルーファスの考えが読めたため何も言わずに黙っていた。
「しかし…それでも、貴方の身分は貴族です。私達の無礼、どうか平に御容赦下さい。」
マルティナはそう言って深々と頭を下げると、ルーファスは些かムッとして返した。
「あのさぁ、俺はただの魔術師だ。そんで、ただ旅してる。時々こういう街で金稼いで旅費作って、そんでまた旅続けてんだ。それがもう十年位続いてる。今更さ、貴族だなんだなんて言われんのは、正直鬱陶しいだけだっつぅの。」
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