第一章
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マルティナ…えっと…」
その男は未だ若く、マルティナと同じ年頃であろうと思われた。
だがマルティナとは違い、何だかおどおどしている。顔はそこそこで背もあり、謂わば優男と言った風であるが、気が弱いのかマルティナの前で小さくなっていた。
「ダヴィッド。あんた…また何かやらかしたんじゃないだろうねぇ?」
マルティナはそう言って男を睨み付ける。一方、ダヴィッドと呼ばれた男は何をどう話したらよいか悩んでいる様で、額からは冷や汗が噴き出していた。
そんな二人を見ていたヴィルベルトは、不意に壁の向こうから聞こえた声に目を丸くした。
「阻みしものは廃れよ!」
その声が聞こえたかと思った瞬間、壁は見る間に崩壊して声の主が姿を見せた。
「師匠!何てことするんですかっ!」
「あ…ヴィー。お前、こんなとこで何してんだ?」
「何してるじゃありません!ここ、さっき会った女性のお店なんですよ!」
ヴィルベルトが怒ってそうルーファスを窘めていると、その後ろで埃を被ったマルティナがユラユラと立ち上がり、真っ赤なオーラを纏いつつ言った。
「てめぇら…店、ぶち壊してんじゃねぇよ…。」
まるで地獄の底から沸き上がるような低いトーンで言ったマルティナに、ヴィルベルトもルーファスも体を強張らせた。
ルーファスが恐る恐る振り返ると、悪魔の様な形相でマルティナが見ていた。
「おい…これ、どう始末つけてくれるんだい?そもそも、何で私の店がぶち壊されなきゃなんねぇんだ…。おら、言ってみろや。」
まるで街の不良よろしく、マルティナは額に青筋をクッキリ浮かび上がらせて言った。
ルーファスは、何とかマルティナの気を治めようと言った。
「まぁ…話せば分かる。話せば…。」
「なら言ってみろや。」
「えっと…俺とヴィルベルトがブリューヴルムを見ていた時にだな…そこにいる男が光の魔術なんぞ使ってブリューヴルムを追っ払っちまったんだ。そんで俺達が…」
ルーファスが最後まで言い切る前に、マルティナの怒りの矛先はダヴィッドへと移った。
「ダヴィッド?お前なぁ…!」
マルティナの形相にダヴィッドは顔を蒼白にし、その後はマルティナにボコボコにされてしまったのであった…。
ルーファスとヴィルベルトはそれを止めようとはしたが、あまりの殺気に手を出すことも躊躇われ、ただただ眺めてるしか出来なかった。
「汝、元ある形と成せ!」
マルティナの気が収まった頃、ルーファスは魔術で壁を修復した。
「何だ、直るんじゃないか。」
「まぁな。」
ルーファスは苦笑混じりにそう言うと、その横でボロボロになっている男へと問い掛けた。
「お前、なんだってあんなことしたんだ?」
問われたダヴィッドは黙りを通し、全く答えようとはしなかった。
ルーファスは尚も問い掛けては
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