第一章
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立たせて怒鳴ってきた。
「何さ!顔がちっとばかし良いからって、娼婦を小馬鹿にすんじゃねぇよ!」
無視を決め込んで先に行こうとした二人だが、この怒鳴り声に驚き、ルーファスもヴィルベルトも後ろへと振り返った。
その刹那…ルーファスの頬に痛みが走った。女がルーファスへと平手をお見舞いしたのである。それを見ていた周囲の人々は、悪いと思いながらも失笑せざるを得なかったのであった。
「ってぇ…。おいお前、俺になんの恨みがあるってんだ?俺は今、仕事中なんだよ。女になんぞ構ってる余裕なんざねぇんだよ!」
「だからって、あんな言い方ないだろ!こっちは日々の暮らしがかかってんだ。娼婦も立派な職業なんだよ!」
あまりの怒りっぷりに、ルーファスもヴィルベルトも気圧されてしまったが、ルーファスはそんな女の前へヴィルベルトを押し出して言った。
「そんじゃ、こいつ貸してやるよ。ま、大人の付き合い方は知らんけど、愚痴聞き位は出来んだろうよ。」
「師匠!何言ってるんですか!僕は…」
「ほれ、ヴィー。こんだけやっから、この女と店行って話でも聞いてこい。その間に、俺は用を済ませっからよ。」
そう言うや、ルーファスはヴィルベルトに金貨十枚を革袋から取り出して手渡した。
この街で十ゴルテは大金であり、それだけあれば当分は稼ぐ必要はない。だがそれ故に、女は再び怒りを露にした。
「ふざけんじゃねぇ!施しなんでされてたまるか!」
女は大声で怒鳴ったが、ルーファスは事も無げに女へと返した。
「こりゃ正当な代価だ。このヴィルベルトは裏の世界なんぞ知らねぇかんな。ま、全部教える必要なんざねぇが、裏には裏なりに良いとこもある。そいつを掻い摘んで教えてやってくれ。」
「冗談じゃない!私に子守りしろってのかい!?」
女は露骨に嫌な顔をした。それはヴィルベルトも同様で、彼は師に抗議した。
「師匠!僕はそんなこと知る必要ありません!何で連れてってくれないんですか!?」
「ヴィー、今回の相手は魔術師だ。こんな街中で二人して追っ掛ける訳にゃいかねぇし、相手が追い詰められたら何するか分からねぇからな。一先ずは大人しく待っとけ。」
ルーファスは弟子の安全を考え、それを聞いた女もそれに納得したという表情を見せた。ヴィルベルトには分かっていない様であるが…。
ルーファスはそう言うや、ヴィルベルトの反論を聞くことなく立ち去ったのであった。
「もう…僕がどうして…。」
「それじゃ、坊っちゃん?ここで愚痴ってるのもなんだし、取り敢えず私の店に行くよ。別に取って食いやしないよ。こんな商売やってたってね、全うに生きてきたんだよ。」
女はそう言うや、ヴィルベルトの手を握って歩き出した。
ヴィルベルトは女性に手を握られたことなぞ無かったため、始めは慌てふためいてしまった。だが暫
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