第一章
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全に打ち消されてしまったのであった。
「師匠…これは…。」
「魔術だな。こんな時に、なんて嫌な奴だ…。」
苦々しく思いながら、ルーファスは光に向けて良い放った。
「元ある通りに!」
すると、光は瞬く間に消え去り、そこには元来あるべき闇が戻ってはきたが、グリューヴルムは驚いたためか光ることを止めてしまっていた。
「ったく…誰だ!?こんなとこで光明の魔術なんぞ使った奴ぁ…っと。」
ルーファスがそう言った時、公園の奥で走る人影を見たため、ルーファスはヴィルベルトを連れてその人影を追った。
二人共に目が闇に慣れず、それを追うのに苦労したが、何とか街中まで追ってきていた。だがしかし、今度は闇ではなく、それは街中の人混みに紛れてしまい、二人はそれを特定することが出来なかった。
すると、ルーファスは自らの髪を一本抜き取り、それを指輪の様な形に整えてから囁いた。
「我が探し人の下へ導け。」
ルーファスがそう言った途端、それは淡く輝き出し、宙へと浮かび上がって移動し始めた。
「さ、行くぞ。」
ルーファスはヴィルベルトにそう言うと歩き始めた。ヴィルベルトははぐれまいと師を追って歩き出したが、向かった先に些かの問題があった。
ここは夜の街中。単に居酒屋がある程度であれば問題はないのであるが、この通りには多くの娼館があったのである。その中を歩くというのは、ヴィルベルトにはかなりの勇気が必要であった。
ヴィルベルトも魔術師の端くれ。力ならば常人のそれと比ぶべくもないが、それでも十代の子供である。興味が無いと言えば嘘であるが、恥じらいがそれを大いに上回っているのが実状と言えよう。
一方のルーファスは何とも思っていないようだが、見れば壁際で男を誘う女や、店の中を垣間見れば酔って暴れる男達…。ヴィルベルトにとってこれは、現実のものとは思い難い世界であった。
「ヴィー。お前、先に宿に帰っていいんだぜ?考えてみりゃ、ヴィーは未だ十六だしな。夜の街に来るにゃ、ちと若いか。」
「師匠…そんなことより、まだなんですか?結構歩いてると思うんですけど。」
ヴィルベルトは恥ずかしさなど諸々の感情を棄て、ルーファスへと状況を問った。すると、ルーファスは直ぐにその問いに答えた。
「そうだな。奴はどうも移動し続けてる様だし、この街をよく知っているみてぇだな。」
そこまでルーファスが言った時、不意に壁際から一人の女が声を掛けてきた。
「ねぇ、お兄さん。少しで良いからさぁ、寄ってってくんないかなぁ。」
「うざい。」
間髪入れず、ルーファスは一言で拒否した。
一言で切られた女は一瞬顔を引き攣らせたが、直ぐに作り笑顔に戻ってルーファスに言った。
「そんなつれないこと言わないどくれよぅ。」
「失せろ。」
再び一蹴され、女は額に青筋を浮き
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