第一章
V
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のだが、肝心のルーファスは頑として意思を曲げなかった。
ルーファス自身、クリスティーナやアルド達のことはよく知っている。寧ろ自分の家族…侯爵家の人々よりも好いているのであるが、その思いに甘えることを由としないのもまたルーファスなのである。
「師匠。公爵様から旅費を受け取って来ましたよ。」
そんなところへヴィルベルトが入ってきた。手には中程の革袋を持っているが、それがルーファスが待っていた旅費である。あの場にヴィルベルトさえ置いてくれば、クリスティーナは旅費を渡してくれるとルーファスは考えたのである。
「お、来たか。そんじゃ行くか!」
「ルーファス様!」
アルドは間の悪いことこの上ないと言った風にルーファスとヴィルベルトを見るが、二人は素知らぬ風に出発する用意をした。尤も、支度が整えてないのはヴィルベルトだけなのだが。
しかし、アルドはそれでも下がる気はなく、そんな二人に対して言った。
「お二方!もう少し私共のこともお考え下さい!私は心配で堪らぬのです。万が一、貴殿方の身に何かあったらと思うと…。」
「アルド。俺だってな、本当は心配なんぞ掛けたくねぇんだ。」
「でしたら…」
「それとこれとは違う。ただ、俺は旅が好きなんだ!」
「師匠…全く答えになってませんよ…。」
ヴィルベルトは半眼になってルーファスに言ったが、ルーファスはそんな彼の言葉を聞き流して部屋を出て行ったのであった。ヴィルベルトも遅れじと荷物を担ぎ上げて師の後を追って出て行き、その後には執事のアルドだけがポツリと取り残された。
「お二人共、無事に戻ってくるのですぞ。」
二人が出て行った扉を見つめ、一人呟くようにアルドは言ったのだった。
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