暁 〜小説投稿サイト〜
魔術師ルー&ヴィー
第一章
V
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
のため、ヴィルベルトは少し間を置いてからクリスティーナへと答えた。
「貴族には見えないからです。」
 そう答えたヴィルベルトは、次のクリスティーナの問いに目を丸くしてしまった。
「それは、あやつがそれを見せないからではないのか?」
「…!?」
 ヴィルベルトはハッとした。
 確かに、ルーファスは会った時から貴族の雰囲気を感じさせなかった。ヴィルベルトはそんな師が普通だと思い込んでおり、それがわざとやっているとは考えもしなかったのである。
「あやつはな、貴族であることを望まなかった。幼少期には礼儀正しく躾られ、勉学も武術も常に上位であった。幼心ながら、民の模範になるべく努力を重ねておったのだ。」
「では…何故あの様に振る舞われるのでしょうか?」
 その問いにクリスティーナの表情は憂い、遠くを見つめながらヴィルベルトへと言った。
「あやつは…望まれて生を受けた訳ではないのだ。」
 その言葉を聞いた時、ヴィルベルトの体は強張った。彼もまた、望まれぬ子であったのである。
 それを知ってか知らずか、クリスティーナは先を続けた。
「全てを語る訳にはゆかぬが、あやつは現在の当主とは血が繋がっていないのだ。世間体には実子とされてはいるが、あの髪にあの瞳ではな…。現当主は実子として分け隔てなく見ておるが、私にもその心中は解らん。」
 そこまで語ると、クリスティーナは静かにヴィルベルトへと歩み寄り、彼の肩に手を置いて言った。
「ヴィルベルト。ルーファスを頼んだぞ。」
 その言葉に様々な想いを感じ取ったヴィルベルトは、クリスティーナを見て「はい。」と力強く一言で返したのであった。
 その頃、ルーファスは旅支度を整え終え、いつでも出発することが出来る様になっていたが、そこへ一人の使用人が来ていたのであった。
「ルーファス様。本日はお泊まりになり、出発は明朝陽が昇られてからになさっては如何でしょう?」
「いや、ヴィルベルトがきたら直ぐに発つ。本当はこんな長居する気なかったかんなぁ。」
「ですが、そうお急ぎなさらずとも、妖魔の封印が強化されているのであれば安心なのでは?」
「そりゃそうだが、他に別の依頼があるからな。兎も角、その依頼を早く済ませてぇんだよ。」
「そうは申されましても、皆ルーファス様がお泊まりになるとばかり思い、既に支度を整えております。」
「それは知らん。俺は俺の思い通りに行動するだけだかんな。」
 ここでルーファスを留めようと話している使用人は、この館の執事であるアルド・レンメルトである。
 彼は三十年以上この館で執事をしており、ルーファスのことも幼い時分から知っている。そのため女公爵同様、ルーファスを自分の孫の様に感じているのであった。
 そんなアルドが、心配で仕方無いと言った風にルーファスを引き留めようとしている
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ