第一章
V
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良いですね。妖魔の封印も強化してあるのですし、少なくとも三百年程は何の問題も無いと思いますから。」
「お前達…本当に金に執着せんなぁ。いつもは旅費の小銭で大騒ぎしとるくせに。」
クリスティーナは呆れ顔で言うが、前の二人はそんなものと言った風笑っていた。
「ま、それだから私はルーファスを後継に据えたいのだかな。」
「またその話かよ!それは無理だってキッパリと断っただろうが!さっさと旅費だけだしてくれ。直ぐに出発すっからよ!」
ルーファスはそう言うや、その場…と言うかその話から逃げる様に部屋を出ていったのであった。
残った二人はやれやれと言った風に苦笑したが、ヴィルベルトは直ぐにクリスティーナへと向き直って問い掛けた。
「公爵様。貴女は本当に師匠を後継にしたいとお考えなのですか?バーネヴィッツの分家には、もっと血の濃く繋がった優秀な方々がおられますでしょうに。」
ヴィルベルトに問われたクリスティーナは、小さな溜め息を洩らして椅子へと腰を下ろして言った。
「そうだな…。」
それは女公爵にはそぐわない弱々しい返答であった。そしてクリスティーナは不意に立ち上がり、開け放たれた大窓からバルコニーへと出たため、ヴィルベルトも静かに後を追ってバルコニーへと出た。
バルコニーへ出て暫く、二人はその広い庭に咲う花々や広大な空に漂う雲を眺めた。ヴィルベルトは女公爵の陰りを察し、ただ黙して待っていた。
そうして後、クリスティーナは先の問いに答えた。
「私の周囲には、確かに多くの血縁は居る。だが…誰も彼もがこの地位欲しさに群がりはするが、この地を任すに値する器の持ち主は居らん。私に子があれば今すぐにでも隠居したいところだが、私達の間には子は生まれなんだからな。」
「ですが…僭越ながら、師匠に公爵の器に値するものがあるとは僕には思えませんが…。」
「ヴィルベルト。お前、あやつの何を見ておる?弟子のくせして解らぬとは、何とも情けない奴じゃのぅ。」
クリスティーナは呆れ顔でヴィルベルトへと言った。一方のヴィルベルトは彼女の言葉に動揺してあたふたしていたが、暫くして不意にクリスティーナが笑い出して言った。
「全く…何で弟子なんぞと思ぅていたが、成る程…お前だからか。」
「はい?」
ヴィルベルトはその言葉にどう返して良いか判らず、ただポカンとクリスティーナを見たのであった。
クリスティーナは粗方笑い終えると、間の抜けた顔で見ていたヴィルベルトへと言った。
「ヴィルベルト。お前、ルーファスを侯爵の息子とは思ぅておらんだろ?」
「はい。師匠は魔術師であって貴族ではありません。」
「何でそう思うのだ?」
クリスティーナに問われ、ヴィルベルトは少々面食らってしまった。半年程の旅の中で、ヴィルベルトはそれを考えもしなかったのである。そ
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