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時の止まりし世界
決断

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「君は、この世界と自分、どちらを捨てることを選ぶのかな?」
気が付くと頭の中にこう、問いかけが響いてきた
辺りは黒も黒。光という概念は存在していないとも思えるような暗黒の世界。そこにはただ一人、自分だけがぽつんとあった
「ここは一体どこで、貴方は何者なんだ?」
少年は問いかけの主に問いかけをする
「君にそれを伝えたところで理解できはしないさ。それよりも」
と、ここで少しの間が空き、再びこう放つ
「君は、この世界と自分、どちらを捨てることを選ぶのかな?」
「それは、どういう意味なんだ?」
「簡単なことさ。君は自分の命か、君の住んでいる世界、どちらを切り捨てる?」
「僕の答え一つで世界が滅ぶかもしれないとでも言うつもりなのか?」
「そう、まさにその通りさ」
その答えを聞いて少年は呆れる。今まで何気なく過ごしていたどこにでもいそうな自分に、世界の運命が託されていると言うのだ。あまりにも馬鹿げた話だ。しかし、それがもしも事実なのだとしたら、
「それなら答えはもう決まっている」
「ほう、君はどちらを選ぶのかな?」
「僕は、自分の命を捨てることを選ぶさ」
「ふむ、多くの人はそう言うだろうから敢えて聞くけども、君の住んでいる世界には確かに君の命一つでは代えが効かない程に多くの命があるだろう。君にも大切な人が何人かいるだろう。だが、あんなにも争いの絶えない世界で、さらに醜い人間も多くいる世界は本当に必要であると思うのかい?」
「ああ、人間は自分の正義を貫く為に強大な力をもって多くの争いを産んだりもした。だが、それでも、それだけじゃないから。それに」
「それに?」
「誰かを切り捨てるような真似をする位なら、僕は自分から切り捨てられることを選ぶよ」
と、少年が言うと、少しの沈黙が続いた。もう、何も起きないのではないか?と思い始めた頃に
「ふふふ、それだから君は面白い。自虐的であるとも言えるようなその言動、とても面白いよ」
「何が面白いのかはよくわからないけども、これから一体どうなるんだ?」
「おっと、ここからはもう君の踏み込める話ではないよ。君は今の選択によって、世界から隔絶され、そして消えた」
「なら、今の僕は幽霊ということにでもなるのかい?」
「実際はそうではないけどもね。さて、目を瞑ってごらん」
言われた通りに少年は目を瞑る。その途端彼の意識は深く深くへと沈んでいった
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