第81話 《赤眼》のザザ
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放ったもう一発の銃弾がバギーの装甲に当たった事で逃走する事に意識を向き直した。
「やだよぉ・・・助けて・・・助けて・・・!!」
後ろで涙声で助けを求めるシノンを見て、この既視感の正体を理解する事が出来た。全く同じって訳じゃないけど、今のシノンはーーー
『嘘だろ?な、なんで、なんでアレが!』
『動け!動け動け!動いてくれ!!』
SAOでPoHが持ってた《友切包丁》を見て、通り魔事件のトラウマからきた恐怖で身体が動かなくなったオレと似てるんだ。
「シノン!オレの声、聞こえるか!?」
オレは恐怖に包まれているシノンに声をかけて、意識をオレに向けさせる。
「このままだと追いつかれる。お前が奴を狙撃してくれ」
「無理・・・無理だよ!!」
「命中させなくてもいい!!牽制だけでいいんだ!!」
「無理!あいつ・・・あいつは・・・」
オレが《オーバーロード》で奴に一撃叩き込む事も出来なくはないけど、そんな事をしたら、ハンドルがお留守になる。シノンに狙撃してもらわないと、多分逃げ切れない。それでも無理ならーーー
「分かった!そんなに無理だってんなら、運転を代われ!!オレがそのライフルで撃つ!!」
シノンに運転を代わってもらって、オレが《へカートU》を使って奴を撃つ。ライフル狙撃どころかハンドガンでも発砲すらまともに出来ないオレでも、《へカートU》の威力に耐えて数撃ちゃいずれ当たる。動けない奴よりまだマシだ。
「へカートは、私の分身・・・私、以外の、誰にも扱えない・・・」
「・・・じゃあやってくれ。お前しか扱えないなら」
オレの言葉に応じてくれたのか、シノンが後部座席からライフルを背後に向けてくれたのが、走行音に紛れた小さな物音で分かる。このまま撃ってくれれば逃げ切れるーーー
「・・・撃てない。撃てないの・・・指が動かない。私、もう戦えない・・・」
なんて、簡単に事が運べる訳じゃない。そもそもこれはシノンの精神的な問題だ。オレの思う通りに行くわけがない。
「撃てるさ。戦えない人間なんかいない・・・戦うか、戦わないか・・・その選択があるだけだ!!!」
オレはバギーの右のハンドルを左手で握り、右手を後ろにいるシノンの右手に添える。
「選択なら、私は戦わない方を選ぶ・・・もう辛い思いはしたくない・・・この世界でなら強くなれると思ったのは、ただの幻想だった」
その言葉を聞くと、ますます昔のオレと似たような心境だと思えてくる。こういう時、昔のオレには何があったっけーーー
「・・・シノン、オレも一緒に撃つよ。一度だけでいい、この指を動かしてくれ。オレが支える・・・オレが仲間になる!」
オレには、昔から今まで支えてくれる
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