【夢幻に彷徨う蒼き蝶】
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んじまってるんだぞ。おれの名前……そのおじさんからきてるの、父ちゃんから聞いてるだろ」
ボルトという男の子は、うつむき加減でそう言った。
ねじ、というおじさんは、もうしんでいるらしい。
ぼると、という男の子の名は、そのおじさんからきている……?
「あ…、霧がだんだん晴れてきた気がする…!」
「お、ほんとだ。…ん? 向こうが明るく見えるってばさ、森から出れるんじゃねえかな! 行ってみようぜっ」
女の子と男の子に手を引かれるが、彼の足は地面に張り付いたかのように動かない。
「何してんだよ、おれたちと一緒に行こうってばさネジ!」
ボルトに迷いなくそう呼ばれた時───彼の足は、ヒマワリとボルトに手を引かれるままに歩き、そして走り出し、光差す方へ向かってゆく。
……あぁそうか、俺は確か、音忍の一人と刺し違えたも同然になったはずで───その後、どうなったのだろう。あのまま、死んだというのだろうか。まだ、死ぬわけにはいかないんだが……
死んでいようといまいと、何故この少年少女と出逢ったのだろう。
ネジおじさん、と呼ばれた気がするが、ひどく他人事のように思える。
ただひとつ、はっきりと分かるのは……俺はこの子達と“この先”へは行くべきではないという事。
ヒマワリと……ボルト、だったか。
……二人共、すまない。
せっかく俺を見つけてくれたのに───さよならだ。
声にならない言葉を残し、彼は不意に自分の体が宙に浮くのを感じた。
「うわあっ、なんだ!? 急にすげぇ風…っ」
「お、お兄ちゃん、おじさん、どこ……?!」
一陣の風が、ごうっと音を立て吹きすさび、木の葉が幾つも舞ってボルトとヒマワリは目を開けていられず、掴んでいたはずの手さえ離してしまった。
──風が止み、二人が目を開けた時には立ち込めていた霧が嘘のように晴れ、森の中ではない木ノ葉の里に近い開けた場所に立って居た。
ふと、すっきりと晴れ渡る青空を見上げると、蒼くきらめく綺麗な蝶が一匹、音もなくひらひらと舞っている。
「あ……待って、ネジおじさ──」
ヒマワリが声を掛けた途端、すぅ…っと青空に溶け込むようにその姿を消した。
「お兄ちゃん、ネジおじさんが会いにきてくれたのかな…?」
「……違うと思う、たぶんヒマワリの方が見つけたんだってばさ」
「もう……会えないのかな」
「そんなことない、きっとまた会えるよ。そん時は……消えちまわないように、今度はちゃんとおれが捕まえてやるってばさっ」
《終》
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