第一章
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の目の前に出てきたものは、それだけで一財産と言えるだけの財宝だったのである。少なく見積もっても、そこにある金貨で一生遊んで暮らせるだろう額の代物なのだ。
「師匠、何かあったんですか?」
月を見ていたヴィルベルトが、こちらの様子に気付いて問ってきた。そのため、ルーファスは光を自分の頭上に動かし、その光に金貨を翳したのだった。
ヴィルベルトはそこへ近付いてそれを見、ルーファスと同じような表情をして言った。
「ドエール金貨じゃないですか!」
ドエールとは、以前にあったこの土地の地方名である。
ヴィルベルトはそれをルーファスから受け取り、まじまじと観察して言った。
「本物ですね。それも…最盛期の一番良いものです。これ一枚で、現在鋳造されてる金貨十枚以上と交換出来ますよ…。」
「それさ、あと三百枚近くあるぞ?」
「えぇっ!?何でですか!?」
ヴィルベルトは目を大きく見開き、信じられないと言った表情を見せていた。そのため、ルーファスは「ほれ、ここ。」と、祭壇下を指差してヴィルベルトへと見せた。
「嘘…!?」
それを見たヴィルベルトは、もう少しで失神するところであった。
「ふぉっふぉっ…!若いもんには宝の山かいのぅ。」
「ファルケルさん!若くなくても、これは充分宝の山ですよ!これだけあればこの聖堂を立て直し、その上一家族位なら楽に数十年食べてけるだけの額ですよ!」
ヴィルベルトはそう言うが、ファルケルはそんなヴィルベルトに静かに言った。
「そうかも知れんが、ここは人の来る場所ではないからの。何せ、地下には妖魔が眠っておるわけじゃし、そこへきて聖堂を修復する必要なぞのぅ。」
ファルケルはそう言って笑ってはいたが、心なしか淋しげでもあった。
ファルケルがこの地へ入った時、既に妖魔を封じた石碑は朽ちかけていた。そこから立ち上る妖気にあてられ、人々は病に苦しんでいたのである。
そこで、ファルケルは聖堂地下にあった石碑を修復し、それを守るよう周囲を石で囲って封じたのであった。それを守るため、ファルケルは一人でこの朽ちかけた聖堂の守人となったのである。
そして誰にも看取られぬまま、一人で逝ってしまったのである…。
「そんじゃ、これ持って行くか?バーネヴィッツの館に行けば、叔母上が換金してくれんだろうしな。」
ルーファスがそう言うと、プカプカと浮かんでいたファルケルが声を上げた。
「バーネヴィッツ家の縁者なのかいの!?」
「あ…あぁ。遠縁だが…。」
あまりの大声に、ルーファスもさすがに驚いた。だが、そんなルーファスを気にすることなくファルケルは言った。
「早ぅそれを言ってほしかったわい!未だクリスティーナ殿が御当主なのじゃろう?わしが言ったと伝えてくれれば、何もかも取り計らってくれる筈じゃ。」
「あんた…そ
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