第一章
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しまえば中に点在する泉も枯れ果ててしまうのである。その泉は小さな小川を作り、それが幾つも重なって大きな河を作っている。それがなければ、女公爵とて躊躇いなく賊共々焼き払っているだろう。
「ヴィー…。グリュネってば、こっから馬車でも一月はかかるよな…。」
「はい…。徒歩だと約二月半はかかるかと…。」
今、二人が困っていることは時間ではない。旅をするには金がかかり、先に話したように二人は貧乏なのだ。要は旅費が足りない…と言うことなのである。
二人は今、旅のための金勘定をしているのだ。
「師匠…。この道のりだと、少なく見積もっても三十シヴルは必要ですよ?馬車を使えば十ゴルテは必要…。現在の所持金は…十シヴルと二十八エルナですが…。」
「…全く足りねぇ…。」
二人がブツブツと言っているのを聞き、ファルケルは二人へと声を掛けた。
「金なら心配いらんぞ。」
その言葉に、ルーファスもヴィルベルトも不信極まりないと言った風な表情を見せた。
「はぁ?幽霊に金があるとは思えんが?」
ルーファスは話を中断させられたことで、些か腹立たしく思った。依頼者は幽霊であり、その依頼のための初期費用をどう捻出すべきかを考えている最中なのだから、それもやむを得ないことではある。
だが、そんな二人の思いを知ってか知らずか、ファルケルは笑みを浮かべながらルーファスを呼び、祭壇下を指差して言った。
「そこへ一ヶ所だけ色の違う石が填まっとるじゃろ?」
そう言われてルーファスが光を向けてみると、確かに灰がかった石の中に茶の石が紛れていた。
「これがどうしたってんだ?」
「ほれ、解鍵の呪文を唱えてみろ。」
「…?」
ルーファスは訝しく思いはしたが、仕方無くファルケルの言う通りにした。
「我が前に開け。」
ルーファスがそう言った瞬間、茶の石が下へと下がり、それに伴って周囲の石も動き出した。
「お前さん、そんな短い言葉で魔術を発動させとるんか?」
「まぁな。俺のオリジナルだから、他の奴は使えねぇが。」
「ほぅ…。しかし、あの坊っちゃんには教えとるようじゃが。」
会話の最中、ファルケルは一人惚けて月を見ているヴィルベルトへと視線を向けた。ルーファスは苦笑しつつ、それについて答えた。
「そうだな。未々だが、あいつの力だったら出来んだろうってなぁ…と、何か出てきたぞ。」
石の動きが止まると同時に、底が上がって何か出てきた。それを見たルーファスは、あまりのことに自分の目を疑った。
「これは…!」
「分かったいのぅ。こりゃ、二百年前にこの地を治めとった領主の持ちもんじゃ。これだけあれば足りるじゃろ?」
ファルケルは何とも無げにそう言ったが、そこには山のような宝石に金貨、銀貨。それに象牙で作った髪飾りなどの装飾品も多数あった。
ルーファス
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